弁護士法人大地総合法律事務所、代表弁護士の佐久間です。
不倫の事実が発覚しただけでも十分に深刻ですが、そこに「妊娠」や「中絶」が絡んでくると、問題はさらに複雑になります。
不倫相手の配偶者からの慰謝料請求に加え、中絶費用の負担、場合によっては「中絶慰謝料」まで請求されるケースもあるでしょう。
何も知らないまま動いてしまうと、支払わなくてもよかった金額まで応じてしまったり、逆に対応を誤って請求額が増えてしまうこともあります。
本記事では、不倫で妊娠・中絶が絡む状況で実際にどのようなお金の問題が生じるのか、男性・女性それぞれの立場から整理したうえで解説していきます。
まずは全体像を落ち着いて把握していきましょう。
\不倫がバレてしまった.../
不倫で妊娠・中絶が絡む場合に問題になるお金

不倫に妊娠や中絶が絡む場合、発生するお金の問題は「不貞慰謝料」だけではありません。
中絶費用や休業損害、さらには中絶慰謝料まで請求されるケースがあります。
まずは何が問題になりうるのかを整理しておきましょう。
不貞行為に対して請求される慰謝料
不倫の事実が発覚した場合、自分の配偶者・不倫相手の配偶者の両方から、不貞行為に対する慰謝料を請求される可能性があります。
慰謝料の相場は一般的に100〜300万円程度とされています。
不倫の期間や頻度、双方の婚姻状況、離婚に至ったかどうかなど、個別の事情によって金額は大きく変わります。
理論上はあり得ます。
ただし、双方が離婚しないダブル不倫(双方が既婚者である不倫関係)のケースでは、お互いの配偶者が同等の慰謝料を請求し合う形になるため、当事者間の合意によって実質、相殺的な解決(お互いに請求を放棄するゼロ和解など)になる場合もあります。
一方が離婚する・しないによって状況が変わりますので、請求を受けた段階でまず内容を冷静に確認することが大切です。
ダブル不倫特有の解決方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】ダブル不倫で慰謝料請求された方へ|支払い義務や相場・適切な対処法
妊娠・中絶に関する費用
中絶手術にかかる費用は、妊娠週数によって大きく異なります。
| 妊娠週数 | 費用の目安 |
|---|---|
| ~8週 | 12〜13万円程度 |
| 9〜10週 | 15〜16万円程度 |
| 11〜12週 | 18〜19万円程度 |
| 13週以降 | 30〜50万円程度 |
妊娠・中絶は男女共同の行為による結果であるため、中絶費用は男女で分担するのが一般的な考え方です。
どちらかが全額負担すると合意した場合はその限りではありませんが、曖昧にしておくと後のトラブルになりやすいため、早めに話し合っておく必要があります。
中絶に伴う慰謝料や休業損害
中絶費用とは別に、「中絶慰謝料」と「休業損害」が問題になることもあります。
休業損害とは、中絶手術や術後の体調不良によって女性が仕事を休まざるを得なかった場合の損害で、実際の収入や休業期間をもとに算出されます。
中絶慰謝料は、中絶したという事実だけで機械的に認められるわけではありませんが、適切な避妊を行わなかったにもかかわらず避妊していると嘘をついた場合や、妊娠発覚後に不誠実な対応(音信不通、中絶の強要、既婚の事実を隠していたなど)をとった場合には、女性側の身体的・精神的苦痛に対する慰謝料の請求が認められる可能性が高くなります。
また、妊娠・中絶が絡む場合は、不貞慰謝料の増額要因として考慮されることもあります。
別々に請求されることもありますし、まとめて請求されることもあります。
いずれにしても、請求額の合計が相場の範囲内かどうか、請求の根拠が妥当かどうかを確認することが重要です。
安易に全額応じる前に、弁護士に内容を確認してもらうことをおすすめします。
男性側|不倫相手を妊娠させた場合のリスク

不倫相手を妊娠させた場合、男性側にはいくつかの法的・経済的なリスクが生じます。
それぞれのリスクを事前に把握しておくことが、対応を誤らないための第一歩です。
不倫相手・自分の配偶者から慰謝料を請求される可能性がある
不倫相手に配偶者がいる場合、その配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
また、ダブル不倫で自分に配偶者がいる場合は、自分の配偶者からも慰謝料を請求される可能性があります。
妊娠という事実が加わると、不倫の深刻さが増すと判断されやすく、慰謝料額が通常より高くなる場合も珍しくありません。
相場は100〜300万円程度ですが、個別の事情によって変わります。
そのようなケースもあります。
中絶費用や休業損害の負担を求められる場合がある
相手女性が中絶を選択した場合、中絶費用や休業損害の負担を求められることがあります。
中絶費用は男女で分担するのが一般的な考え方で、妊娠週数が進むほど金額が高くなります。
また、手術後に仕事を休んだ期間の休業損害についても、負担を求められる場合があります。
どの程度の割合で負担するかは、妊娠に至った経緯や話し合いの内容によって異なります。
相手から全額負担を強く求められた場合でも、状況によっては交渉の余地があります。
相手が出産する場合は認知・養育費の問題が生じる可能性がある
相手女性が出産を選択した場合、認知と養育費の問題が生じます。
認知とは、法律上の親子関係を成立させる手続きです。
認知をすると養育費の支払い義務が生じ、子どもには相続権も発生します。
また、認知の事実は戸籍に記載されるため、自分の配偶者に不倫が発覚する可能性もあります。
認知しなければ法律上の支払義務は生じませんが、相手女性から認知を求める手続き(認知調停や認知の訴え)を起こされた場合、DNA鑑定等によって親子関係が認められれば、認知の効力が強制的に生じます。
認知を拒否すれば済む、という話ではないことは理解しておいてください。
女性側|不倫相手の子どもを妊娠した場合のリスク

不倫相手の子どもを妊娠した場合、女性側にも複数のリスクが生じます。
「妊娠している側だから請求はされない」と思いがちですが、そうではありません。
自分が置かれている状況を正確に把握しておくことが大切です。
不倫相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性がある
不倫相手に配偶者がいる場合、その配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
不倫の当事者として不貞行為に関与したという事実は、妊娠しているかどうかに関わらず変わらないからです。
慰謝料の相場は一般的に100〜300万円程度で、妊娠という事実が加わることで相手配偶者の精神的苦痛がより大きいと判断され、増額要因になる場合があります。
慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】不倫の慰謝料相場はいくら?請求された側が知るべき金額の目安と下げ方
妊娠していても慰謝料請求が当然になくなるわけではない
「自分も妊娠して苦しんでいるのだから、慰謝料は免除されるはず」と考える方もいらっしゃいますが、慰謝料の請求が自動的になくなるわけではありません。
ただし、妊娠・中絶という事情は、慰謝料額の交渉において考慮される余地はあります。
例えば、身体的・精神的な負担が大きかった事情や、関係に至った経緯などを踏まえて、減額交渉が認められるケースもあります。
請求を受けた場合は、まず請求内容が適正かどうかを確認することが先決です。
感情的に全額を認めてしまう前に、弁護士に相談することをおすすめします。
中絶費用や今後の対応について相手男性と話し合う必要がある
中絶を選択する場合、費用の分担や今後の対応について相手男性と話し合う必要があります。
中絶費用は一般的に男女で分担するものですが、相手男性が費用の負担を拒否したり、連絡を絶ったりするケースもあります。
また、相手男性の対応が不誠実だった場合、中絶慰謝料を請求できる可能性も出てくるでしょう。
出産を選択する場合は、認知や養育費の問題が生じます。
相手男性が認知を拒否した場合でも、裁判によって強制的に認知させることができる制度があります。
相手が話し合いに応じない場合、費用負担の交渉や認知・養育費の請求について、弁護士を通じて進めることが有効です。
当事者同士では感情的になりやすく、話し合いが難航しやすいため、早めにご相談ください。
中絶費用や中絶慰謝料を請求された場合の考え方
中絶費用や中絶慰謝料を請求されると、どこまで応じるべきか判断に迷う方が多いです。
請求されたからといって全額を当然に支払わなければならないわけではありません。
それぞれの考え方を整理しておきましょう。
中絶費用は双方の事情を踏まえて分担を検討する
中絶費用は、基本的に男女双方で分担するものと考えられています。
ただし、「全額負担してほしい」と求められるケースも少なくありません。
全額負担を求められた場合でも、双方の事情を踏まえた話し合いの余地はあります。
例えば、妊娠に至った経緯、双方の収入状況、関係の実態などが考慮されます。
「請求されたから全額払う」と安易に約束してしまう前に、妥当な分担割合はどの程度かを冷静に確認することが大切です。
断ること自体は可能ですが、一方的に拒否するのではなく、話し合いの中で適切な分担を提案することが現実的です。
強硬に拒絶すると、相手の感情的な反発を招き、慰謝料請求や法的手続きに発展するリスクもあります。
交渉の進め方については、弁護士に相談しながら対応するのが安心です。
中絶慰謝料は常に認められるわけではない
「中絶したのだから慰謝料を払うべきだ」と請求されることがありますが、中絶したという事実だけで慰謝料が自動的に認められるわけではありません。
中絶慰謝料が認められやすいのは、主に以下のような場合です。
- 中絶を強要したり、脅迫的な言動があった
- 妊娠発覚後に一方的に連絡を絶った
- 既婚であることを隠して関係を持っていた
- 避妊すると言っておきながら避妊しなかった
逆に言えば、これらの事情がなく、誠実に話し合いに応じていた場合は、慰謝料の請求が認められない可能性もあります。
できます。
中絶慰謝料の相場は50〜300万円程度とされていますが、個別の事情によって妥当な金額は異なります。
請求額が相場を大幅に上回っていたり、認められにくい事情しかない場合には、交渉によって減額できる可能性があります。
不倫で妊娠が発覚した場合にやってはいけないこと

不倫で妊娠が発覚した直後は、パニックになって誤った対応をとってしまいがちです。
しかし、ここでの行動が後の慰謝料請求額や法的リスクに直結します。
やってはいけない行動を事前に把握しておきましょう。
連絡を絶つ・話し合いから逃げる
妊娠を知らされた後、怖くなって連絡を絶ってしまうケースがあります。
しかし、これは最もやってはいけない行動の1つです。
一方的に連絡を断つことは、相手に対する不誠実な対応として、中絶慰謝料が認められる根拠になる可能性があります。
また、連絡が取れなくなると、相手が自宅や職場に直接来るなどのトラブルに発展するリスクもあるでしょう。
感情的に距離を置きたくなる気持ちはわかりますが、話し合いからは逃げないことが重要です。
中絶を強要する
「中絶してほしい」という気持ちを伝えること自体は否定されませんが、強要や脅迫的な言動を取ることは絶対に避けてください。
中絶の強要は、慰謝料請求が認められる明確な理由の1つです。
「中絶しなければ〇〇する」といった発言や、精神的に追い詰めるような行動は、後に大きなリスクになります。
相手が出産を希望する場合、最終的な決断は相手にあります。
誠実に話し合いを続けることが、トラブルを最小限にとどめる方法です。
気持ちを伝えること自体は直ちに強要には当たりません。
ただし、繰り返し強く求めたり、経済的な圧力をかけたり、脅迫的なニュアンスのある言動を取ると、強要と判断されるリスクがありますので注意しましょう。
安易に支払いを約束する
「早く解決したい」という気持ちから、相手に言われるがままに「全額払います」「いくらでも払います」と約束してしまうケースがあります。
一度口頭でも支払いを約束してしまうと、後から覆すことが難しくなる場合があります。
請求を受けた段階では、まず内容の妥当性を確認することが先決です。
相場を大幅に上回る請求であれば、交渉によって減額できる可能性があるので、弁護士にご相談ください。
請求者に直接連絡する
「直接話し合って解決しよう」と考えて、請求者に連絡してしまうケースがあります。
しかし、これは状況を悪化させる可能性が高い行動です。
請求者は強い感情を抱えている状況であり、直接接触することで感情的な対立が激化し、話し合いどころかトラブルに発展するリスクがあります。
また、不用意な発言が後の交渉で不利に働くこともあります。
連絡が来た場合も、すぐに感情的に対応するのは避けてください。
「弁護士に相談中です」と伝えて、直接のやり取りを最小限にとどめることをおすすめします。
不倫慰謝料を請求されたときのNG行動と正しい対処法は、以下の記事で解説しています。
【関連記事】不倫で慰謝料請求された|NG行動や正しい対処法・確認すべきことを解説
妊娠・中絶が絡む慰謝料を減額できる可能性があるケース

妊娠・中絶が絡む慰謝料は高額になりやすい傾向がありますが、状況によっては減額できる可能性があります。
請求を受けた段階で諦めるのではなく、減額の余地がないかを確認することが重要です。
請求額が相場より高すぎる
不貞慰謝料は100〜300万円程度、中絶慰謝料は50〜300万円程度が目安とされています。
請求額がこの相場を大幅に上回っている場合、交渉によって減額できる可能性があります。
相手が弁護士を立てて請求してきた場合でも、こちら側も弁護士を通じて交渉することで、最終的な支払額が下がるケースは少なくありません。
減額交渉の進め方は、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】不倫慰謝料は減額交渉できる?可能性がある14の状況と進め方
請求額はあくまでも相手側の希望額です。
合意なく一方的に決まるものではありませんので、内容が妥当かどうかを冷静に確認してください。
特に根拠の説明が乏しい高額請求については、交渉の余地が十分にあります。
請求額が高すぎると感じた場合の対応は、以下の記事で解説しています。
【関連記事】不倫慰謝料が高すぎるのはいくらから?取るべき行動や過去の判例
不倫前から婚姻関係が破綻していた
不倫が始まった時点で、すでに相手の婚姻関係が実質的に破綻していた場合、慰謝料の請求が認められない、または大幅に減額される可能性があります。
「婚姻関係が破綻していた」と認められるには、単に仲が悪かっただけでは不十分で、長期間の別居や離婚協議中であったなど、客観的な事情が必要です。
この点は証拠や事実関係の確認が重要になりますので、該当する可能性がある場合は弁護士に詳しく状況を伝えてください。
妊娠・中絶と請求内容の関係が不明確である
「妊娠・中絶があった」という事実を根拠に高額な慰謝料が請求されていても、具体的にどのような損害が生じたのかが不明確なケースがあります。
例えば、中絶慰謝料として請求されているにもかかわらず、強要や不誠実な対応といった慰謝料発生の根拠となる事情が乏しい場合、請求が認められない可能性があります。
また、不貞慰謝料と中絶慰謝料がまとめて高額請求されている場合も、それぞれの根拠と金額の妥当性を個別に確認することが大切です。
それは当然のことだと思います。
請求内容の妥当性を正確に判断するには、法的な知識が必要です。
請求を受けた段階で1人で抱え込まず、早めに弁護士にご相談ください。
不倫・妊娠・中絶・慰謝料についてよくある質問
ここまで、妊娠・中絶が絡む慰謝料の種類やリスク、やってはいけない行動などについて解説してきました。
最後に、慰謝料を請求された方からよくいただく質問にお答えします。
Q1. 妊娠・中絶があると慰謝料はいくら増えますか?
明確な増額幅が決まっているわけではありません。
妊娠・中絶は慰謝料の増額要因として考慮される可能性がありますが、どの程度増えるかは個別の事情によって異なります。
「妊娠・中絶があったから必ず〇〇万円増える」という一律の基準はありませんので、請求額が妥当かどうかは弁護士に確認しましょう。
Q2. 中絶費用を全額請求された場合、応じる必要はありますか?
必ずしも全額に応じる必要はありません。
中絶費用は基本的に男女で分担するものとされており、一方が全額負担しなければならないという法的なルールはありません。
全額負担を求められた場合でも、妊娠に至った経緯や双方の状況を踏まえた交渉をすることで、負担割合を変えられる可能性があります。
安易に「全額払います」と約束することは避け、まず弁護士に相談しましょう。
Q3. 妊娠した側でも慰謝料を支払う必要がありますか?
不倫相手に配偶者がいた場合、妊娠した側(女性)も不倫の当事者として、相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
妊娠しているという事情は、慰謝料請求が免除される理由にはなりません。
ただし、妊娠・中絶という身体的・精神的負担を負った事情は、慰謝料額の交渉において考慮される余地があります。
請求を受けた場合は、まず内容の妥当性を確認することが大切です。
Q4. 妊娠・中絶があっても慰謝料の減額交渉はできますか?
できます。
妊娠・中絶が絡んでいても、請求額が相場を大幅に上回っている場合や、不倫前から相手の婚姻関係が実質的に破綻していた場合、慰謝料発生の根拠となる事情が乏しい場合などは、減額交渉が認められる可能性があります。
「妊娠・中絶が絡んでいるから減額は無理」と諦めることはありません。
弁護士に依頼することで、適正な金額での解決を目指すことができます。
不倫で妊娠・中絶が絡む慰謝料請求は早めに弁護士へご相談ください
不倫に妊娠・中絶が絡む案件は、不貞慰謝料だけでなく、中絶費用・休業損害・中絶慰謝料など複数の問題が同時に発生します。
請求を受けた段階で誤った対応をとると、支払わなくてもよかった金額まで負担することになりかねません。
大切なのは、請求を受けてもすぐに応じるのではなく、内容の妥当性を冷静に確認することです。
減額の余地がある場合も少なくありません。
弁護士法人大地総合法律事務所では、不倫トラブルに関するご相談を承っています。
妊娠・中絶が絡む慰謝料請求は複雑になりやすいため、早めにご相談いただくことで、対応の選択肢が広がります。
1人で抱え込まず、まずはお気軽にご連絡ください。
\不倫がバレてしまった.../