特定調停を、弁護士に頼まず自分で手続きできる、費用の安い借金整理の方法だと思っていませんか?
債権者1社あたり約1,000円という低コストは魅力ですが、成功率や手続きの手間を考えると、必ずしも特定調停が最善の選択とは限りません。
本記事では、特定調停の仕組みや利用条件、メリット・デメリット、手続きの流れをわかりやすく解説します。
任意整理や個人再生など他の債務整理との違いも紹介しているので、自分に合った方法を選ぶ判断材料として役立ててください。
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特定調停とは?向いている人・向いていない人
特定調停を検討している方の多くは「とにかく費用を抑えたい」「弁護士に頼む勇気がない」という気持ちを持っています。
ただ、制度の中身を知らずに手続きを始めると、時間と労力をかけたのに解決できないというケースも珍しくありません。

裁判官と調停委員2名が間に入って、債権者との条件調整を進めます。
裁判所が間に入って借金を整理する公的な制度
特定調停とは、返済が難しくなった借金について、簡易裁判所の調停委員会が仲介役となり、債権者との返済条件を調整する手続きです。
2000年施行の特定調停法に基づく公的な制度で、弁護士を介さず本人が申し立てられる点が最大の特徴です。
手続きの主な効果は以下のとおり。
- 将来発生する利息のカット
- 元本を分割払いに変更
- 債権者からの取り立て停止(貸金業者に限る)
参考:裁判所 – Courts in Japan「特定調停|東京簡易裁判所」
特定調停を利用できる人の条件と返済能力が必要な理由
特定調停を利用できるのは、このままの状態では近いうちに「支払不能に陥るおそれのある債務者」です。
ただし、大前提として返済能力があることが必須です。
収入がまったくない場合や返済期間が極端に長期にわたる場合は、特定調停を進めること自体が難しくなります。
特定調停とほかの債務整理方法の違い

「特定調停が自分に向いているかどうか」を判断するには、他の債務整理との違いを正確に理解する必要があります。
| 比較項目 | 特定調停 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
| 手続きの主体 | 裁判所 | 弁護士・司法書士 | 裁判所 | 裁判所 |
| 費用目安 | 数千円~1万円程度 | 1社あたり2~5万円 | 30~60万円 | 20~50万円 |
| 成功率 | 低い | 比較的高い | 高い | 高い |
| 官報掲載 | あり | なし | あり | あり |
| 職業制限 | なし | なし | なし | あり(士業・警備員など) |
| 元本減額の可否 | 原則不可(利息カット中心) | 原則不可(利息カット中心) | 可能(最大1/5程度まで減額) | 全額免除 |
特定調停よりも柔軟な交渉ができる任意整理
任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉して返済条件を変更する手続きです。
成功率も高く、過払い金の返還請求も同時にできます。
費用は1社あたり2~5万円程度ですが、弁護士の受任通知を送った時点で取立てが即日停止します。

特定調停は書類作成から期日までのやり取りまですべて自分でやる必要があります。
任意整理なら弁護士が窓口になるので、自分で直接やり取りする必要がありません。
任意整理について詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
【関連記事】任意整理とは?費用・デメリット・手続きの流れまでわかりやすく解説
借金の額が大きい場合に検討したい個人再生や自己破産
もし、借金額が大きい場合は個人再生や自己破産も選択肢に入ってきます。
- 個人再生:借金を大幅に減額(最大1/5程度)したうえで残り3~5年で返済。持ち家を残せる場合がある。
- 自己破産:返済義務を免除(免責)してもらう手続き。生活の再建を最優先にできる。
借金総額が大きいが、持ち家や車を残したい、長期で返済の見通しが立つ場合は個人再生、どれだけ条件を変えても見通しが立たない場合は自己破産が選択肢になります。
元金そのものを減額、またはなくす手続きです。
それぞれの手続きについては、以下の記事で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
【関連記事】個人再生とは?制度の特徴や利用時の注意点を解説
【関連記事】自己破産とは?借金から解放?仕組みやデメリット・手続き方法を解説
弊所へのご相談から特定調停→任意整理に変更した事例
特定調停から任意整理に変更した事例をみてみましょう。
この相談者様は平日に裁判所へ出向く必要があることや、手続きを自分で進める負担の大きさに強い不安を感じていました。
このようなケースでは、結果として不利な条件で合意してしまうリスクもあります。
そこで、弁護士が代理人として交渉を行い、手続きを一任できる任意整理へと方針を変更。
結果的に、返済が遅れていた分の遅延損害金と将来利息のカットを実現できました。
弊所へのご相談から特定調停→自己破産に変更した事例
ある相談者様は「できる限り借金を減らして返済したい」という思いから、特定調停を希望されていました。
しかし、詳しく状況を確認すると、継続的な返済を前提とする解決自体が現実的ではない状態であることがわかりました。
特定調停とは、あくまで将来的に返済を続けていくことを前提とした手続きです。
そのため、仮に調停が成立しても、途中で支払いが難しくなり、再び問題が深刻化するリスクが高いと判断しました。
そこで、一度生活を立て直すことを優先すべきという観点から、自己破産への方針転換をご提案。
結果として、自己破産手続きが完了し、生活再建に集中できる環境を整えることができました。

債務整理以外で家計を立て直すための公的な支援制度
もし、一時的な支援で家計が立て直せそうであれば、公的な支援制度を検討するのも選択肢の1つです。
- 生活福祉資金貸付制度:低所得者・高齢者・障がい者世帯を対象とした低利・無利子の貸付(社会福祉協議会)
- 法テラス(日本司法支援センター):収入が一定以下の方を対象に弁護士費用の立替制度あり
参考:厚生労働省「生活福祉金貸付制度」
特定調停を利用して費用を抑えながら借金を減らす5つのメリット

特定調停には、ほかの債務整理にはない独自のメリットがあります。
自分の状況に合っていると判断できた方は、メリットを理解したうえで活用しましょう。

複数社あっても数千円で済むということですか?
例えば5社に借金があれば費用の合計は5,000円程度。
他の債務整理と比べて費用差は歴然です。
ただし、安さの代わりに手間と時間はすべて自分で負担することになります。
1社約1000円の費用で手続きできる
特定調停の費用は申立手数料500円+切手代(約500円)で1社あたり約1,000円です。
任意整理(1社あたり3~5万円程度)と比べると、大幅なコスト削減が可能です。
債権者からの直接の取立てが原則止まる
特定調停を申し立てると、貸金業者からの取り立ては貸金業法の規定により停止されます。
ただし、取り立て停止の効力は貸金業者(消費者金融・クレジット会社など)にのみ適用されます。
個人からの借金・売掛先・一部の銀行などには効力が及ばない場合があり、任意整理と比べると停止まで数日かかる点も把握しておきましょう。
給与や財産の差押えを止める措置を申し立てと同時に使える
特定調停は申し立てと同時に、強制執行の停止を裁判所へ申し立てることができます。
すでに差押えが始まっている場合の対応として活用が可能です。
官報に載らず職場への通知もないため周囲にバレにくい
個人再生・自己破産は官報に氏名・住所が掲載されますが、特定調停にはこの義務がありません。
信用情報機関への事故情報登録は発生しますが、金融機関のみが参照できる情報で家族・職場・近隣には通知されません。
整理したい借金だけを選んで申し立てられる自由度の高さ
特定調停では、複数の借金のうち整理したいものだけを選んで申し立てることができます。
「銀行のカードローンだけ整理したい」「知人への借金は除きたい」といった対応が可能です。
特定調停を成功させるために知っておきたい6つのデメリットと注意点
特定調停にはメリットがある一方、無視できないデメリットも存在します。
順に解説します。
成功率がそこまで高くない
特定調停は、他の債務整理と比べて成立しにくい手続きです。
実際、令和5年の司法統計年報によると、簡易裁判所における特定調停のうち、「調停成立」に至った割合は約26.4%(6,804件/25,795件)にとどまっています。
これは、特定調停が債権者の同意を前提とした手続きであることが大きく影響しています。

つまり、話し合いがまとまりきらなくても、手続きとしては前に進める仕組みといえます。
参考:裁判所 – Courts in Japan「令和5年 司法統計年報(民事・行政編)【令和7年9月16日更新版掲載】」
参考:e-Gov 法令検索「民事調停法(調停に代わる決定)第十七条」
平日に裁判所へ出頭が必要になる
調停期日は平日のみで、手続きは通常2~3回の期日を経て進みます。
仕事をしている方は有給休暇の取得など、事前のスケジュール調整が必要です。
過払い金の返還請求を同時に行えない
特定調停中に過払い金の返還請求を同時に行うことはできません。
2010年以前から借り入れている方など、過払い金が発生している可能性がある方は、別途手続きを進める必要があります。
返済を怠ると裁判なしで即座に差押えされてしまう

特定調停が成立すると「調停調書」が作成されます。
調停調書は、確定判決と同じ法的効力(債務名義)を持ちます。
返済が滞ると、債権者は裁判を起こすことなく即座に給与・預金口座の差押えを申し立てられます。
通常の借金では「裁判→判決→差押え」という段階を踏みますが、調停調書があればこのプロセスが省略されます。
参考:公益財団法人 日本調停協会連合会「民事調停のメリット」
信用情報機関に登録されカードやローンが5年程度使えなくなる
完済から5年程度はクレジットカードの新規発行やローンの審査がとおりにくくなります。
これは任意整理・個人再生・自己破産でも同様に発生するデメリットです。
書類の作成から裁判所とのやり取りまですべて自分で行う必要がある
申立書・家計収支表・財産目録などの書類作成から、簡易裁判所への提出・調停委員とのやり取りまで、すべて自分で対応します。
法的判断や交渉の内容は自己責任です。
不安がある方は、まずは弁護士に相談してみてください。
特定調停の手続きを進める具体的な流れと必要書類

特定調停は自分で進めるため、必要書類も自分で用意する必要があります。
家計収支表や財産目録を正確に作成しないと、支払原資の計算ができず話し合いが進みません。
特定調停の申し立てに必要な書類と簡易裁判所への提出方法
特定調停の申し立てに必要な主な書類は以下のとおりです。
- 特定調停申立書
- 家計収支表(月収・支出・返済額を記載)
- 財産目録(預金・不動産・保険などの資産を記載)
- 債権者一覧表(借入先・残高・月返済額を記載)
- 給与明細・源泉徴収票など収入を証明する書類
提出先は、債権者の所在地を管轄する簡易裁判所です。
※自宅近くの裁判所ではない点に注意
特定調停の開始から成立までにかかる期間とスケジュール
申し立てから調停成立までの期間は、おおむね3~6ヶ月です。
第1回期日で家計状況のヒアリング・支払原資の確定、第2〜3回期日で条件調整・成立という流れが一般的です。
特定調停が不成立になった場合の対応と次のステップ
不成立となった場合も、任意整理・個人再生・自己破産への移行は可能です。
1人で抱え込まず、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
特定調停についてよくある質問

ここでは、特定調停についてよくある質問をまとめています。
特定調停は仕組み自体はシンプルですが、実際には状況によって向き不向きがはっきりわかれる手続きです。
疑問を放置したまま進めるのではなく、1つ1つ確認しながら判断していきましょう。
特定調停をするとクレジットカードはいつまで使えなくなりますか?
信用情報機関への事故情報登録が発生し、完済から5年程度はカードの利用停止・新規申し込みの審査落ちが続く可能性があります。
特定調停を自分だけでやるのは難しいでしょうか?
難しいですが、成功例もあるため不可能ではありません。
ただし、書類作成・提出・期日での対応をすべて自分で行うため、一定の手間がかかります。
「書類作成に不安がある」「交渉に自信がない」という場合は、弁護士への相談を先に検討することをおすすめします。
特定調停と任意整理を同時に行うことはできますか?
同じ債権者に対して、特定調停と任意整理を同時に申し立てることはできません。
ただし、債権者が複数いる場合は、債権者ごとに手続きを使い分けることは可能です。
どちらを優先すべきかは、借金の状況・返済能力・急ぎ度合いによって異なります。
特定調停の相談は弁護士と裁判所のどちらにすべきですか?
まずは弁護士への相談をおすすめします。
裁判所の窓口では「どの手続きが適しているか」というアドバイスはもらえません。
弁護士であればあなたの状況をヒアリングしたうえで最適な方法を提案できます。
特定調停を含めた借金のご相談は大地総合法律事務所へ

特定調停は、費用を抑えながら借金の負担を軽減できる有効な手段の1つです。
一方で
- 成功率は約26.4%と決して高くない
- 債権者の同意がなければ成立しない
- 手続きや交渉をすべて自分で行う必要がある
といった特徴から、すべての方に最適な方法とは限りません。
自分に特定調停があっているかわからない、このまま返済を続けられるか不安といった方は、1人で判断せずに弁護士に相談することで、より確実で負担の少ない解決策が見つかります。
弊所では、特定調停を含めた債務整理全般についてあなたの状況に合わせた最適な解決方法をご提案しています。
まずはお気軽にご相談ください。
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