「個人再生を考えているけれど、もし失敗したらどうなるんだろう」
返済の負担を減らせる個人再生は、住宅を手元に残しながら借金を大きく圧縮できる心強い手続きです。
ただ、「失敗」という言葉を目にすると、せっかく決断しても無駄になるのではと不安になる方は少なくありません。
実は、個人再生は申立ての90%以上が認可されており、裁判所に再生計画を認めてもらえない「不認可」はごくまれです。
とはいえ、失敗にはいくつかの決まったパターンがあり、知らずに進めると思わぬ落とし穴にはまることもあるでしょう。
この記事では、個人再生が失敗する4つの類型と原因、やってはいけないこと、もし失敗した場合の対処法まで、わかりやすく解説します。
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個人再生の失敗率と成功率の実態

統計からみる個人再生の認可率
個人再生がどれくらいの確率で認められているのか、まずは実際の調査データで確認します。
日本弁護士連合会が全国50地方裁判所の個人再生事件773件の記録を実際に調べた「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、個人再生事件の90.30%が認可決定に至っています。
終結の内訳は次のとおりです。
| 手続きの終わり方 | 割合 |
| 認可決定(成功) | 90.30% |
| 取下げ | 5.69% |
| 廃止 | 2.72% |
| 申立棄却 | 0.39% |
| 不認可決定 | 0.00% |
| 申立却下 | 0.00% |
| 死亡による終了・その他 | 0.91% |
この表からわかることが2つあります。
1つは、認可されなかったケースの中心は「不認可」ではないことです。裁判所に再生計画を突き返される不認可決定と、入口で退けられる申立却下は、この調査ではいずれも0件でした。
もう1つは、失敗の大半が手続きの途中で起きていることです。取下げと廃止を合わせた8.41%は、申立てのあとに手続きを続けられなくなって離脱した人の割合にあたります。
つまり個人再生でつまずくのは「計画を認めてもらえなかったとき」ではなく、申立てたあとに手続きを維持できなくなったときです。本記事の対策も、そこに重点を置いて解説します。
※この調査は、2022年6月から11月までに申し立てられた個人再生事件から無作為に抽出した記録を、47都道府県50地方裁判所すべてで調べたものです。
参考:日本弁護士連合会「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」

個人再生の申立ては、ほぼ全員が専門家に依頼している
同じ調査では、申立てを誰が行ったかも集計されています。
弁護士が代理人として申し立てた割合は88.10%、司法書士に依頼した割合は10.35%で、代理人を立てずに自分で申し立てた人は0.13%にとどまります。弁護士による申立ての割合は、2002年に調査が始まって以来の最大値です。
つまり個人再生は、実際には「自力で進める手続き」としてはほとんど使われていません。
理由は手続きの構造にあります。個人再生では、再生計画案の作成、債権額の確定、履行テスト(返済を続けられるかを試す積立て)など、期限のある作業が長期間にわたって続きます。前の項目で見たとおり、失敗の中心は不認可ではなく途中で手続きを維持できなくなる取下げ・廃止です。この部分こそ、代理人がついているかどうかで差が出やすいところです。
個人再生が失敗する4つのケース

申立段階で棄却されるケース
1つ目は、申立ての入口で「棄却」されるパターンです。
棄却とは、裁判所が手続きの開始自体を認めないことをいいます。
主な原因は、必要書類の不備や提出遅れ、予納金の未納といった手続き上の問題です。
また、個人再生には債務総額が住宅ローンを除いて5,000万円以下という要件があり、これを超えると利用できません。
継続的な収入の見込みが立たない場合も、返済の前提を欠くため棄却の対象になります。
入口でのつまずきは準備段階で防げるものがほとんどで、弁護士が関われば起こりにくい類型です。
手続き中に廃止されるケース
2つ目は、手続きの途中で「廃止」されるパターンです。
廃止とは、いったん始まった手続きが、最後まで進まずに打ち切られることをいいます。
よくある原因は、再生計画案や報告書の提出期限を過ぎてしまうこと、そして履行テスト中の積立てに失敗することです。
財産を隠していた事実が手続き中に発覚した場合も、廃止につながります。
特に履行テストでの積立て不履行は、「本当に返済を続けられるのか」という裁判所の判断に直結します。
スケジュール管理を怠らないことが、廃止を避ける何よりの対策です。
再生計画が不認可になるケース
3つ目は、再生計画案が「不認可」となるパターンです。
不認可の事由は、小規模個人再生では民事再生法174条2項に定められています。
代表的なものは、次の4つに分けられます。
- 計画が法律の規定に違反している場合
- 再生計画が遂行される見込みがない場合
- 決議が不正な方法で成立した場合
- 債権者の一般の利益に反する場合
なお、債権者の決議を行わない給与所得者等再生(同法241条2項)では、決議に関する事由は当てはまらず、代わりに可処分所得の2年分以上を返済する計画になっているかなどが問われます。
ただし前述のとおり、実際に不認可決定が出るケースはごくわずかです。返済を続けられそうにないと分かった時点で、不認可を待たずに取下げや廃止という形で終わることが多いためです。不認可という結末そのものより、そこに至る前の段階を防ぐことが重要になります。
不認可事由のうち実務で問題になりやすいのが、「再生計画が遂行される見込みがない」と判断されるケースです。
収入に対して返済額が重すぎたり、家計に余裕がなかったりすると、履行可能性を疑われてしまいます。
無理のない返済計画を立てることが、不認可を防ぐ鍵になります。
認可決定後に取消になるケース
4つ目は、いったん認可された後に決定が「取消」されるパターンです。
最も多い原因は、認可された再生計画どおりに返済できず、滞納してしまうことです。
認可後に財産隠しや虚偽の申告が発覚した場合も、取消の対象になります。
取消が確定すると、減額された借金は元の金額に戻ってしまいます。
せっかく認可までたどり着いても、その後の返済を続けられなければ意味がありません。
不認可になった場合の対処法は、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】個人再生が不認可になったらどうする?要件や不認可時の対処法を解説
個人再生でやってはいけないこと

偏頗弁済・特定債権者への返済
やってはいけないことの代表が、特定の債権者だけに返済する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」です。
弁護士に依頼して受任通知を送った後は、すべての返済をいったん止める必要があります。
「お世話になった知人にだけは返したい」「カードだけは使い続けたい」という気持ちはわかりますが、これは禁物です。
一部の債権者だけを優遇すると、その分が清算価値に上乗せされ、結果として返済総額が増えてしまうことがあります。
場合によっては、再生計画そのものが認められない原因にもなります。
財産隠し・虚偽申告・新規借入れ
財産を隠したり、借金や収入について嘘の申告をしたりするのも、絶対に避けるべき行為です。
個人再生では、保有する財産を正直に申告し、その清算価値以上の金額を返済する仕組みになっています。
そのため、財産を隠して返済額を少なく見せようとしても、後で発覚すれば廃止や取消につながります。
うっかりの申告漏れも、財産隠しと同じように扱われることがあるため注意が必要です。
さらに、手続き中に新たな借入れをしたり、ギャンブルや浪費を続けたりするのも禁物です。
履行テストの怠り・家計簿の不備
個人再生では、認可前に「履行テスト」と呼ばれる積立てを求められることがあります。
これは、再生計画どおりに返済を続けられるかを試すための練習期間です。
期間は3〜6か月程度が一般的ですが、運用は裁判所によって異なり、東京地裁では6か月、名古屋地裁では1.5〜3か月程度とされています。
この積立てを怠ると、返済能力を疑われ、廃止や不認可の原因になります。
あわせて家計簿の提出を求められることも多く、収支が不自然だと「家計管理ができていない」とみなされかねません。
毎月コツコツ積み立て、家計簿を正直につけることが、認可への着実な一歩になります。
個人再生に失敗するとどうなるか

減額前の借金額に戻り遅延損害金が加算される
失敗してまず起こるのが、減額されるはずだった借金が元の金額に戻ることです。
個人再生が認可されれば借金は大幅に圧縮されますが、棄却・廃止・不認可・取消のいずれかになれば、その効果は得られません。
それどころか、手続き中に返済を止めていた期間の遅延損害金が上乗せされることもあります。
例えば、借金500万円のケースで比べてみましょう。
| 項目 | 個人再生が成功した場合 | 失敗した場合 |
|---|---|---|
| 返済の対象 | 約100万円(5分の1に圧縮) | 500万円(元のまま) |
| 遅延損害金 | なし | 滞納期間分が加算 |
| 返済の進め方 | 原則3年・最長5年の分割 | 一括請求や債権者との個別協議 |
※上記は借金500万円で最低弁済額が100万円となる場合の一例です。
実際の圧縮率は債務額や財産の状況によって異なるため、失敗と成功では負担がまるで変わってきます。
信用情報のブラックリストが残ったままになる
個人再生を申立てると、信用情報機関に事故情報が登録されます。
いわゆる「ブラックリスト」の状態で、登録期間は5〜7年が目安です。
この期間は、新たな借入れやクレジットカードの作成、ローンの利用が難しくなります。
個人再生が成功すれば、完済から一定期間が過ぎたあとに情報は消えていきます。
ところが失敗した場合、借金問題が解決しないまま、ブラックリストの状態だけが続くことになりかねません。
信用情報が回復しないと、生活の立て直しそのものが遠のいてしまいます。
事故情報が消えるまでの期間は、以下の記事で原因別に解説しています。
【関連記事】ブラックリストは何年で消える?5年と7年の違い・今すぐ確認する方法
債権者から一括請求・訴訟・差押えのリスク
失敗すると、受任通知や手続きの開始によって止まっていた督促が再び動き出します。
債権者からの返済請求が再開され、滞納が続けば残額を一括で請求されることもあるでしょう。
それでも支払えなければ、訴訟を起こされ、給与や預金の差押えに発展することもあります。
特に給与の差押えは勤務先に知られるきっかけになり、生活への影響は小さくありません。
給与が差押えられた場合の影響と止める方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】給料差し押さえで会社をクビになる?解雇が認められにくい理由と止める方法
個人再生に失敗した場合の3つの対処法

再申立てを検討する
失敗の原因が書類の不備や履行テストの失敗など、立て直しが利くものであれば、再申立てを検討できます。
不足していた書類をそろえ、無理のない返済計画に練り直したうえで、改めて申立てる流れです。
ただし、1つ注意点があります。
給与所得者等再生は、前回の認可決定の確定から7年が経過しないと再び利用できません。
一方、小規模個人再生にはこうした年数の制限はないため、要件を整えれば再チャレンジしやすい手続きです。
どの方法で再申立てするかは、失敗の原因によって変わってきます。
給与所得者等再生・ハードシップ免責への切り替え
手続きの種類を切り替えることで、認可にたどり着ける場合もあります。
小規模個人再生で債権者の同意が得られず否決されたなら、同意を必要としない給与所得者等再生への変更が選択肢になります。
また、認可後に病気や失業で返済が難しくなった場合は、「ハードシップ免責」という制度があります。
これは、計画弁済額の4分の3以上をすでに返済しているなど一定の条件を満たせば、残りの返済を免除してもらえる仕組みです。
どの選択肢が向いているかは、収入の回復見込みや返済の進み具合によって変わります。
自己破産・任意整理への切り替え
返済の原資そのものが確保できない場合は、自己破産への切り替えが現実的です。
自己破産なら原則としてすべての借金の支払い義務が免除され、生活を立て直しやすくなります。
持ち家を手放したくないという理由だけで個人再生にこだわると、かえって解決が遠のくこともあります。
逆に借金が比較的少なく、将来利息のカットで十分なケースなら、任意整理への切り替えという手もあります。
大切なのは、収入の回復見込み・住宅を残す必要性・債権者の対応という3つの視点から、自分に合った手続きを選ぶことです。
個人再生の失敗についてよくある質問

個人再生の失敗について、相談者からよく寄せられる質問をまとめました。
個人再生の失敗率はどれくらいですか?
認可決定に至った割合が90.30%なので、認可されずに終わった割合はおよそ1割です(日本弁護士連合会「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」)。
ただし、その内訳は取下げ5.69%と廃止2.72%が中心で、裁判所に再生計画を認めてもらえない「不認可決定」は0件でした。
「計画が認められないのではないか」という不安よりも、申立てたあとに手続きを続けられるかどうかのほうが、結果を大きく左右します。
個人再生に失敗したら自己破産になりますか?
必ず自己破産になるわけではありません。
失敗の原因が書類の不備などであれば、整え直して再申立てができます。
債権者の同意が得られなかった場合は、給与所得者等再生への切り替えという道もあります。
自己破産は、あくまで返済の原資が確保できないときの選択肢の1つです。
個人再生は何度でも再申立てできますか?
小規模個人再生については、再申立ての回数に法律上の制限はありません。
要件を満たし直せば、改めて申立てること自体はできます。
ただし、給与所得者等再生は前回の認可確定から7年が経過しないと利用できない制限があります。
何度も失敗を繰り返すと裁判所の心証にも影響するため、再申立ては原因をしっかり改善してから臨むことが大切です。
個人再生の失敗が不安な方は大地総合法律事務所にご相談ください

個人再生は申立ての90.30%が認可されており、不認可決定はごくまれです。つまずくのは審査の厳しさではなく、申立てたあとに手続きを維持できなくなる場面です。
失敗には棄却・廃止・不認可・取消という4つの類型がありますが、その多くは事前の準備とスケジュール管理、そして無理のない返済計画で防げるものです。
偏頗弁済や財産隠し、履行テストの怠りといった「やってはいけないこと」を避け、正しく進めれば、個人再生はほとんどの方が認可までたどり着ける手続きです。
万一うまくいかなかったとしても、次の道は再申立てや手続きの切り替えなど必ず残されています。
大地総合法律事務所では、個人再生をはじめとする債務整理のご相談を無料で承っています。
「自分は失敗しないだろうか」という不安も、すでに手続きでつまずいてしまったお悩みも、まずは私たちにお聞かせください。
状況をうかがったうえで、あなたに合った進め方を一緒に考えます。
1人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
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