弁護士法人大地総合法律事務所、代表弁護士の佐久間です。
高齢者を狙った詐欺の手口はどんどんと巧妙化しており、どれだけしっかりした方でも「詐欺の電話に出てしまう状況」と「すぐにお金を動かせる状態」がそろえば、誰もが被害に遭う可能性があります。
実際に、警察庁が平成30年に行ったオレオレ詐欺被害者等調査では、親族をかたる手口の被害者354人のうち78.2%が「自分は被害に遭わないと思っていた」と答えています。
「どちらかといえば」を含めると、その割合は95.2%にのぼります。
この記事では、親御さんを守りたいご家族の目線で、今日からできる予防策、被害が分かった後の動き方、認めたがらないときの接し方、成年後見や家族信託の位置づけを解説します。
\もしかしたら詐欺に遭ったかもしれない.../
高齢者の詐欺被害の割合と被害額|令和7年の統計で分かる3つの事実
高齢者の方が置かれている状況は、件数も被害額も過去最悪であること、奪われたお金の約6割は今も65歳以上の方から出ていること、1件あたりの被害額が跳ね上がったこと、の3つに整理できます。
特殊詐欺の認知件数は27,832件、被害額は1,423.1億円で、被害額は前年(718.8億円)の約2倍です。
※2026年9月時点

今は違うのですか?
ただし、被害額で見ると59.2%を高齢者が占めています。
件数の割合が下がったのは、20代・30代への被害が急に広がったからであって、高齢者の被害が減ったわけではありません。
実際、65歳以上の認知件数そのものは前年より535件増えています。
| 項目 | 令和7年の数値(警察庁確定値) |
| 特殊詐欺の認知件数・被害額 | 27,832件・1,423.1億円(いずれも過去最悪) |
| 65歳以上の被害 | 14,273件・841.1億円。法人被害を除いた件数の51.3%、被害総額の59.2% |
| 既遂1件あたりの被害額 | 523.6万円。ニセ警察詐欺は922.5万円 |
| 最も被害額が大きい手口 | ニセ警察詐欺が11,014件・1,005.0億円。被害総額1,423.1億円の約7割 |
| 最初の接触手段 | 電話が78.8% |
| 予兆電話 | 331,653件。1か月あたり平均27,638件 |
高齢者の被害の特徴は「件数」ではなく「1件あたりの金額の大きさ」にあります。
オレオレ詐欺の認知件数は80代以上の3,235件(199.5億円)が最多ですが、被害額では2,453件の70代が314.6億円と上回ります。
ニセ警察詐欺も認知件数の最多は30代の2,239件である一方、被害額は70代274.6億円、60代256.3億円と親御さんの世代に集中しています。
退職金や預貯金をまとめて持っているうえ、犯人が「口座が犯罪に使われている」「資産を確認する」と言って全財産を一度に動かさせるからです。
令和8年からは統計の区分が変わっている

警察庁は令和8年から特殊詐欺の整理の仕方を変えました。
これまで別枠だったSNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口に含め、ニセ警察詐欺を独立した手口として位置づけたのです。
つまり令和8年の「特殊詐欺」は、令和7年の「特殊詐欺」より数える範囲が広くなっています。
同じ名前でも中身が違うので、単純に並べて比べることはできません。
令和8年上半期(2026年1月から6月)の暫定値では、特殊詐欺の認知件数は22,031件、被害額は1,816.2億円でした。
65歳以上の被害は9,230件・817.8億円で、法人被害を除いた認知件数の42.2%、被害総額の46.0%を占めています。
42.2%と令和7年の51.3%は、数える範囲が違う数字です。
警察庁が同じ区分で出している前年同期との比較では1.1ポイント下がっただけで、65歳以上の認知件数は1,186件、被害額は276.6億円増えています。
参考記事:令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)|警察庁
令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)|警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ
【関連記事】振り込め詐欺が再び増加中!手口や対策から相談先・救済法まで弁護士が解説!
高齢者はなぜ狙われるのか「うちの親は大丈夫」が通用しない理由
詐欺の電話は、知識ではなく状況で人を追い込みます。
国民生活センターも、高齢者が抱えやすい「お金」「健康」「孤独」の不安を悪質業者があおると指摘しています。
日中に自宅にいて固定電話に出る生活の形も、犯人には狙い目でしょう。
平成30年の警察庁調査で被害者の8割近くが「自分は被害に遭わない」と思っていたのも、疑う準備がないまま電話に出る人が大半だからです。
ご家族が確認すべきなのは親御さんの知識量ではなく、「詐欺の電話に出ない環境」と「一度に大金を動かせない状態」ができているかどうかです。
参考記事:オレオレ詐欺被害者等調査の概要について|警察庁
高齢者の消費者被害(テーマ別特集)|国民生活センター
高齢者を狙う詐欺の手口一覧|電話・訪問・スマホ
高齢者を狙う詐欺は、手口の名前より「入口」で覚えるほうが実用的で、入口は電話・訪問(勧誘)・スマホの3つが代表的です。
どの入口から来ても、犯人が最終的に求めるのは「振込」「現金の手渡し」「キャッシュカード」「電子マネー」のいずれかです。
| 手口 | 入口 | 犯人が最後に求めるもの |
| ニセ警察詐欺 | 電話(国際電話・固定電話) | 指定口座への振込、現金の手渡し |
| オレオレ詐欺(親族・弁護士を名乗る) | 電話 | 現金の手渡し、振込 |
| 還付金詐欺 | 電話 | ATMでの振込操作 |
| 架空料金請求 | 電話・SMS・はがき | 電子マネー、振込 |
| 点検商法・リフォーム | 訪問 | 高額な工事契約 |
| 催眠商法(SF商法) | 会場への勧誘 | 高額商品の購入契約 |
| 訪問購入・買取 | 訪問 | 貴金属や着物の引き渡し |
| 送り付け商法 | 宅配 | 代金の支払い |
| リースバック | 訪問・電話 | 自宅の売買契約 |
| 霊感商法(開運商法) | 訪問・電話・対面 | 高額な物品の購入や祈祷料 |
| サポート詐欺 | パソコンやスマホの警告画面 | 電子マネー、遠隔操作 |
| SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺 | スマホ・SNS | 振込、暗号資産の送信 |
電話が入口の手口

オレオレ詐欺とは違うのですか?
令和7年のオレオレ詐欺14,489件のうち、10,859件がニセ警察詐欺です。
警察官や検察官を名乗り、「あなたの口座が犯罪に使われている」と言って振込や現金の手渡しを求めます。
最近は、普段インターネットバンキングを使わない高齢者に、口座開設から操作まで指示して振り込ませる事例も確認されています。
電話が入口の手口に共通するのは「今すぐ」「誰にも言うな」と急がせる点ですので、警察も銀行も役所も電話でお金や暗証番号を求めることはないと、親御さんに繰り返し伝えてください。
【関連記事】ニセ警察官詐欺が急増中!全世代が知るべき手口と対策を弁護士が解説
訪問・勧誘が入口の手口
国民生活センターが2026年9月に公表した2025年度のデータでは、年齢が上がるほど訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入の割合が高くなり、85歳以上では通信販売を抜いて訪問販売が最も多くなっています。
点検商法、催眠商法、訪問購入、リースバック、霊感商法と名前は違っても、玄関や会場で契約書にサインさせる流れは共通で、特殊詐欺と違って後で述べるクーリング・オフや取消しが使える場合があります。
なお、頼んでいない商品が一方的に送られてきた場合、販売業者はその商品の返還を請求できません(特定商取引法59条1項)。
代金を払う必要も保管の必要もありませんので、慌てて支払わないよう伝えておいてください。
参考記事:2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況|国民生活センター
スマホ・SNSが入口の手口

「ウイルスに感染しました」と警告を出して電話をかけさせるサポート詐欺は、電子マネーで支払わせる手口が典型的です。
SNS型投資詐欺やロマンス詐欺は若い世代の被害が目立つ手口ですが、令和8年上半期の統計では、SNS型投資詐欺の被害額は60代が274.9億円、70代が132.4億円と、親御さんの世代にもはっきり広がっています。
スマホに慣れている親御さんほど「うちの親は大丈夫」と見てしまいがちです。
画面に出た電話番号にはかけない、この1点だけでも伝えておきましょう。
家族が今日からできる予防策|「電話の入口」と「お金の出口」を設計する
予防策は、親御さんに「気をつけてね」と言うことではなく、気をつけなくても被害に遭いにくい状態をご家族が仕組みとして作ることです。
仕組みは「電話の入口をふさぐ」「お金の出口を細くする」「変化に気づく」の3つで、上から順に効果が大きく、費用もほとんどかかりません。
電話の入口をふさぐ

「相手を疑うため」ではなく「詐欺の電話は録音されると分かった時点で切れる」と伝え方を変えると、納得される方が多いです。
犯人は声を残したくないので、留守番電話の応答が流れると多くはそこで切ります。
令和7年に特殊詐欺の犯行に利用されたとして報告された電話番号は123,138件で、そのうち92,996件、およそ75.5%が国際電話番号でした。
海外と電話をする予定がない固定電話なら、国際電話の発着信を無料で休止できます。
そのうえで常時留守番電話にする、番号非通知を拒否する、迷惑電話防止機能つきの電話機や自治体の貸出機器を使う、という順で入口を狭めてください。
それでも出てしまう電話は残ります。
合言葉を決めるご家庭も増えましたが、犯人がAIで声を似せる手口もあり、それだけでは足りません。
より確実なのは、「お金の話が出た電話は、必ず一度切って、家族が登録した元の番号にかけ直す」というルールを親御さんと共有することです。
電話機の横に「お金の話は一度切る。〇〇(お子さんの名前)に電話」と書いた紙を貼るだけでも、判断の負担が減ります。
お金の出口を細くする
電話の入口をすべてふさぐことはできませんから、次に「信じてしまっても大金が動かせない状態」を作ります。
多くの金融機関には、70歳以上などの条件でATMの1日の引出限度額を下げる、ATMでのキャッシュカード振込を止めるといった仕組みがあります。
下げられる金額も条件も金融機関ごとに違いますので、親御さんの口座がある金融機関に「高齢者向けの利用制限」を問い合わせてみてください。
ネットバンキングを普段使わない親御さんが急に口座を開設したり、アプリを入れたりしていたら、それ自体が危険サインです。

同意のうえで「印鑑と通帳は別々の場所に置く」「カードは普段使わない口座の分だけ預かる」と取り決めるのが現実的です。
判断能力が下がってきたら、後で説明する日常生活自立支援事業や成年後見制度に切り替えます。
親が詐欺に遭ったと分かったら|当日から返金までの動き方を時系列で
被害が分かった日にご家族がすべきことは、順番が決まっています。
「警察に言えばお金が戻る」と考えて警察だけに行く方が多いのですが、警察は犯人を捜査する機関で、被害金を返す窓口ではありません。
逆に「振り込んだらもう終わり」と諦めて何もしないと、戻せたはずのお金まで失いかねません。
返金の可能性を左右するのは、被害に気づいてから振込先の金融機関に連絡するまでの速さです。
当日中:振込先の金融機関に被害の事実を伝える
振込で支払った場合、最初に連絡する相手は警察ではなく、振込先の金融機関です。
犯人の口座にお金が残っていれば、その残りを被害者で分ける制度があるからです。
これが振り込め詐欺救済法(正式名称は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」)で、金融機関は口座が犯罪に使われた疑いがあると認めたとき、その口座の取引を停止する措置をとります(同法3条)。
措置をとるかどうかは金融機関の判断で、ご家族の依頼で確定するものではありませんが、被害の事実と振込の日時・金額を早く伝えるほど、犯人が引き出す前に残高が止まる可能性は高まります。
振込明細や通帳のコピー、相手の口座番号が分かるものを手元に置いて電話してください。
当日中:警察と消費生活センターへ|家族からでも相談できる

警察相談専用電話の#9110も、消費者ホットライン188も、ご家族からの相談を受け付けています。
犯人が今まさに来る、ATMに向かっているといった場面は110番です。
被害届には本人の関与が必要な場面が多いものの、相談して状況を整理することはご家族だけでもできます。
消費生活センターは「契約」型の被害に強く、業者との交渉のあっせんやクーリング・オフの助言を無料で受けられます(通話料は別)。
警察への相談は、被害届の準備になるほか、金融機関が救済法の手続きを進める際の裏づけにもなります。
金融機関から警察との連携を求められることもありますので、警察への相談もできるだけ当日中に済ませましょう。
振り込め詐欺救済法の流れと限界
分配の仕組みがあるとはいえ、期待どおりに戻るとは限らず、知っておくべき限界が3つあります。
1つ目の限界は、戻るのは「口座に残っていたお金」だけで、犯人がすでに引き出していれば戻らないことです。
2つ目は、被害者が複数いて、認められた被害額の合計が口座の残高を超えると、残高を被害額の割合で按分するため全額は戻らないことです(同法16条2項。消滅した債権の額が1,000円未満のときは、分配金を支払う手続き自体が行われません。同法8条3項)。
3つ目は、対象が「振込」を使った被害に限られることで、現金の手渡し・郵送、電子マネー、暗号資産の送信による被害は、この法律では救済されません。
契約型の被害はクーリング・オフと取消しを検討する
点検商法や催眠商法のように業者と契約を結んだ被害には、特殊詐欺とは別の手段が使えます。
ただし「何でも戻る」わけではありませんので、適用範囲を確認してください。
| 契約の形 | クーリング・オフ | 期間 |
| 訪問販売 | できる | 法定書面の受領日から起算して8日 |
| 電話勧誘販売 | できる | 同8日 |
| 訪問購入(買取業者が自宅に来る) | できる | 同8日 |
| 通信販売(自分で申し込んだ) | 制度なし | 返品特約の表示がなければ、商品を受け取った日から起算して8日 |
訪問販売・電話勧誘販売では、通常必要な量を著しく超える契約(過量販売)を契約から1年以内に解除できる規定もあり(同法9条の2・24条の2)、同じ布団を何組も買わされた被害はこの対象になり得ます。

要件は「加齢や心身の故障で判断力が著しく低下していること」「生活の維持に過大な不安を抱いていることを事業者が知りながら不安をあおったこと」「契約しなければ今の生活の維持が困難になると告げたこと」の3つで、加えて事業者の側に合理的な根拠などの正当な理由がないことが必要です。
参考記事:特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)|e-Gov法令検索
消費者契約法(平成12年法律第61号)|e-Gov法令検索
【関連記事】クーリング・オフのやり方|よくわかる!弁護士に学ぶ詐欺被害
弁護士に相談するタイミング
被害額の大小や、相手が分かっているかどうかにかかわらず、まずは一度ご相談ください。
金融機関や警察への連絡と並行して、相手方への請求ができるかどうかも含めて見通しをお伝えします。
相手方の特定と請求には時効もありますので、早めに見通しを立てておくと選択肢が減りません。
親が「騙されていない」と認めたがらない・隠すときの接し方
被害の疑いがあるのに、親御さんが「そんなことはない」と否定する、隠しているという相談は珍しくありません。
このとき、ご家族が最初にすべきことは事実の確認ではなく、「責めない」と決めることです。
理由は感情論ではなく、責めると被害が広がるからです。
責めない理由は「隠す→二次被害」の連鎖を止めるため
被害に遭った方は、お金を失ったこと以上に「家族に迷惑をかけた」という思いで追い詰められています。
責められると、次に怪しい電話が来ても家族に言えません。
犯人は一度成功した相手のリストを共有して「被害を取り戻せる」と再び電話をかけてきますから、責めた結果として二度目の被害を招くのが最も避けたい展開です。
声のかけ方を変えるだけで、親御さんが事実を話せるようになります。
| 言いがちな言葉 | 言い換えの例 | ねらい |
| 「なんで騙されたの」 | 「最近、警察や銀行を名乗る電話は来ていない?」 | 過去の責任ではなく、今起きていることを聞く |
| 「あれだけ言ったのに」 | 「今すごく巧妙な手口が流行っていて、誰でも引っかかるらしいよ」 | 本人の落ち度ではないと伝える |
| 「いくら取られたの」 | 「一緒に通帳を見て、おかしい出金がないか確認させてほしい」 | 金額の追及ではなく、共同作業に変える |
親御さんが話してくれなくても、通帳の入出金、郵便物や契約書、固定電話の着信履歴、スマホの見慣れないアプリ、宅配便の伝票といった手がかりは確認できます。
大切なのは、確認を「調べる」ではなく「一緒に見る」形で行うことです。
証拠になるものは金融機関への申請や業者への請求で必要ですから、捨てずに日付順で保管してください。
第三者を入れる

ご家族だけで説得しようとすると、親子の関係がこじれて情報が入らなくなります。
担当のケアマネジャーやかかりつけ医など、親御さんが信頼する第三者から声をかけてもらうと、家族の言葉より受け入れられることも多いです。
私たち弁護士も第三者の一人として、ご本人に「これは詐欺の手口です」と客観的に説明する役割を担えます。
親御さんが認めなくても、ご家族だけで消費生活センター(188)や警察相談専用電話(#9110)に相談し、状況を整理して次の一手を決めることはできます。
【関連記事】詐欺に遭ったらどこに相談する?主な相談先や注意点を弁護士が解説
成年後見・任意後見・家族信託は詐欺を防げる?
「成年後見をつければ詐欺を防げる」というご相談も多いのですが、この理解は正確ではありません。
これらはいずれも財産管理を仕組みとして支える制度で、詐欺の電話がかかってくること自体を止める力はないからです。
それでも、被害が起きたときに「取り消せるか」「大金をすぐ動かせない状態か」で見ると、制度ごとに予防線としての意味が違います。
以下は2026年9月時点の一般論です。
| 制度 | 使える時期 | 契約を取り消す権限 | 詐欺の予防線としての意味 |
| 法定後見(後見・保佐・補助) | 判断能力が低下した後。家庭裁判所の審判 | 後見はあり(日用品の購入など日常生活の行為は除く)。保佐・補助は対象行為が限定 | 契約型の被害を後から取り消せる。振込型の被害はお金を取り戻す直接の手段にはならない |
| 任意後見 | 判断能力があるうちに公正証書で契約。効力は判断能力が低下し、家庭裁判所が監督人を選んでから | なし | 誰に管理を任せるかを本人が決めておける |
| 家族信託(民事信託) | 判断能力があるうちに契約 | なし | 信託した財産は受託者(家族)が管理するため、本人が一度に動かせるお金を減らせる |
| 日常生活自立支援事業 | 判断能力に不安があるが、契約内容は理解できる段階 | なし | 社会福祉協議会が通帳等を預かり、日常の金銭管理を支援 |
窓口も制度ごとに違い、法定後見は家庭裁判所、任意後見は公証役場、日常生活自立支援事業はお住まいの社会福祉協議会が入口になります。
法定後見は「取り消せる」が武器|判断能力が低下した後の制度

ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は除かれます。
保佐は民法13条に列挙された借財や不動産取引などの重要な行為、補助は家庭裁判所が定めた行為に限られます。
ただし、取消しが効くのは「契約」型の被害に限られます。
振込型の特殊詐欺は相手が誰か分からないことが多く、取消しをしてもお金は戻りません。
法定後見は、判断能力が「欠けている」「著しく不十分」「不十分」という段階になってから家庭裁判所に申し立てる制度です(民法7条・11条・15条)。
つまり、しっかりしている今の親御さんには使えず、備えとして考えるなら次の制度になります。
元気なうちにできる備えは任意後見・家族信託・日常生活自立支援事業

任意後見は、任意後見契約に関する法律(平成11年法律第150号)に基づき、判断能力があるうちに「将来、誰に何を任せるか」を公正証書で決めておく契約で(同法3条)、効力が生じるのは判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任してからです(同法4条1項)。
家族信託は信託法に基づいて財産の管理を家族に託す契約で、預貯金や不動産を信託財産に移すと、本人が一人で大金を動かせなくなります。
どちらも取消権はありませんので、詐欺の観点では「手元に置くお金を減らし、被害額の上限を下げる予防線」と位置づけるのが正確です。
後見を使うほどではないが通帳の管理が心配、という段階なら、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業もあります。
契約内容を理解できる方が対象で、日常的な金銭管理や通帳の預かりを支援してもらえます。
参考記事:日常生活自立支援事業|厚生労働省
金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について|一般社団法人全国銀行協会
高齢者の詐欺に関するよくある質問

代表的なものをまとめましたので、当てはまるところからお読みください。
個別の事情で結論が変わることもありますので、迷ったらご相談ください。
Q1.親がすでに振り込んでしまいました。お金は戻りますか?
戻る可能性はありますが、全額とは限りません。
振込型の被害は振り込め詐欺救済法の対象ですが、犯人が引き出した後なら残高がなく、被害者が複数なら按分です。
まず振込先の金融機関に連絡し、そのうえで警察と弁護士に相談して、加害者への請求という別ルートも含めて見通しを立ててください。
Q2.親が認知症かもしれません。契約を取り消せますか?
取り消せる場合があります。
契約の時点で意思能力がなかったと証明できればその契約は無効になりますし(民法3条の2)、消費者契約法4条3項7号の要件を満たせば取消しの対象になります。
後見が開始している場合は後見人が取り消せますが、後見開始前の契約には遡りません。
医師の診断や契約時の記録が重要ですので、契約書や業者とのやり取りを保管のうえご相談ください。
Q3.消費生活センターと警察、どちらに先に相談すべきですか?
振込型の特殊詐欺なら、振込先の金融機関が最初で、次に警察です。
訪問販売や電話勧誘など契約型の被害なら、消費生活センターが先で、業者が悪質なら警察にも相談します。
迷う場合は両方に相談して構いませんし、どちらもご家族からの相談を受け付けています。
Q4.弁護士に頼むと費用倒れになりませんか?
被害額と回収の見通しによっては、費用倒れになる場合もあります。
そのため弊所では、初回相談で「回収の見込みがどの程度あるか」「費用はいくらか」を先にお伝えし、依頼するかどうかはその後にご判断いただいています。
相談だけで方向が見えることも多いので、費用の心配だけで相談をためらわないでください。
高齢者の詐欺については大地総合法律事務所にご相談ください
令和7年の特殊詐欺の被害額は過去最悪で、その約6割は65歳以上の方から奪われています。
被害は判断力の問題ではなく、「電話に出てしまう状況」と「大金をすぐ動かせる状態」の問題です。

無料で、その日のうちに終わり、入口の大半をふさげます。
次の帰省では、通帳とATMの限度額を一緒に確認しましょう。
ご家族ができるのは、電話の入口をふさぎ、お金の出口を細くし、「一度切って折り返す」ルールを共有しておくことです。
被害が分かった日のうちに、責めるより先に振込先の金融機関へ電話をし、そのうえで警察と消費生活センターに相談してください。
弊所では、ご家族だけのご相談も、親御さんご本人を交えたご相談もお受けしています。
「これは詐欺なのか」「今から何ができるのか」を整理するところから、一緒に進めていきましょう。