社内不倫が知られてしまい、慰謝料を請求された。
そんなとき、頭に浮かぶのは慰謝料の金額だけではないでしょう。
先に結論をお伝えすると、慰謝料の問題(民事の話)と会社の処分(労務の話)は、法律上まったく別の問題です。
そして、退職を求められても法的に辞めなければならない義務はありません。
本記事では、社内不倫で慰謝料を請求された方が知っておくべきことを、会社との関係を中心に整理していきます。
まずは落ち着いて、ひとつずつ確認していきましょう。
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社内不倫でも慰謝料を請求されるのか

社内不倫であっても、配偶者のいる相手との関係は不貞行為として慰謝料請求の対象になる場合があります。
職場で始まった関係だからといって、特別扱いされるわけではありません。
法律上の根拠は民法709条の不法行為です。
婚姻関係にある夫婦は互いに貞操を守る義務を負っていると考えられており、配偶者のいる人と肉体関係を持った場合、その配偶者から慰謝料を請求される可能性が生じます。

関係が始まった経緯や職場での立場は、金額の判断で事情として考慮されることはあります。
ただ「同じ職場だったから仕方ない」という理由で請求自体がなくなるわけではありません。
会社にバレたらどうなる?懲戒処分の判断基準
不倫を理由に懲戒解雇まで有効になるとは限りませんが、社内不倫は、職場の秩序や風紀を乱した・会社の評価を損ねたと評価されれば懲戒の対象になりやすいです。
「私生活のことだから会社は関係ない」と言い切れない点に注意が必要になります。
懲戒・異動・退職勧奨といったケースもありますが、すべてのケースでそうなるわけではありません。
懲戒処分が有効になりやすいケース・なりにくいケース
懲戒処分が法的に有効かどうかは、大きく2つの基準で判断される傾向があります。
「企業秩序を乱した(服務規律に違反したと評価される)か」と「会社の社会的評価を毀損したか」です。
判断の方向性を左右する事情を、対比表で整理してみましょう。
| 有効になりやすい事情 | なりにくい事情 |
|---|---|
| 職場内での逢瀬や業務時間中の私的なやり取りなど、業務への具体的な支障があった | 関係はあくまで私生活の範囲にとどまり、業務への支障がなかった |
| 上司と部下の関係で、職場の人間関係や指揮命令に混乱を生じさせた | 対等な同僚同士で、職場の秩序に目立った影響がなかった |
| 取引先を巻き込むなど、会社の対外的な信用に影響が及んだ | 社外に知られておらず、会社の評価に影響していない |
社内不倫イコール懲戒解雇、ではありません。
処分の有効性は行為の態様と業務への影響次第で変わってくるのです。

できます。処分が就業規則の根拠を欠いていたり、行為の内容に比べて重すぎたりする場合、処分の無効を争う余地があります。
処分を告げられても、その場で受け入れのサインをする前に、一度弁護士に相談していただきたいところです。
異動・降格・退職勧奨という形で圧力がかかる実務上の流れ
実務では、正式な懲戒処分よりも、異動・配置転換・退職勧奨といった「柔らかい形の圧力」として現れることが多いです。
同じ部署に不倫相手がいる場合、会社としてはどちらかを異動させて職場環境を整えようとするのが自然な対応だからです。

就業規則に配転の定めがある会社では、業務上の必要性に基づく異動命令には基本的に従う必要があります。
ただ、不倫への制裁だけを目的とした嫌がらせ的な配転や、生活に著しい不利益を与える配転は、権利の濫用として無効になる余地があります。
納得できない異動を命じられたときは、理由の説明を求めて記録を残しておくとよいでしょう。
「会社を辞めろ」と言われても退職する義務はない

退職を求められても、それに応じるかどうかはあなたの自由な判断であり、法的に退職しなければならない義務はありません。
ただし、就業規則違反等を理由に、会社が独自に懲戒手続を進める場合は別の話になります。
不倫の責任は、法律上は金銭賠償(慰謝料)によって果たすものとされています。
相手の配偶者から「会社を辞めろ」「二度と夫(妻)の前に現れるな」と迫られたとしても、退職という形で責任を取ることを法的に強制される仕組みはないのです。
お気持ちは分かりますが、退職はあなたの生活の基盤に関わる重大な決断です。
感情的な要求に押されてその場で約束するのではなく、断ってよい権利があることをまず知ってください。
そのうえで、示談の条件として退職を検討するかどうかは、慰謝料額とのバランスを見ながら冷静に判断すべき事柄です。
退職・接触禁止など示談条件に盛り込まれた場合の考え方
示談では、慰謝料の金額に加えて「退職すること」「今後一切接触しないこと」が条件として提示されることがあります。
退職条項に応じる義務はありませんので、拒否したうえで、慰謝料の金額で解決を図る交渉が可能です。
相手が退職にこだわる場合も、部署の異動を申し出るなど、生活への打撃が小さい代替案を検討する余地があります。
接触禁止条項は、署名前に文言を確認してください。
例えば、同じ会社に勤め続ける場合には、会議や業務連絡で顔を合わせる場面は避けられません。
「一切接触しない」とだけ書かれていると、業務上の接触まで違反だと主張され、違約金を求められるおそれがあります。
あれは我慢するしかないんですか?
我慢しなければならないものではありません。
名誉毀損は「事実の有無にかかわらず」成立すると定められており(刑法230条1項)、真実であることで免責されるのは、公共の利害に関する事実を公益目的で公表した場合に限られます(同230条の2第1項)。
私生活上の不貞は通常これに当たりません。
つまり、告知をちらつかせて金銭や退職を迫る言動が続く場合は、脅迫罪や強要罪が問題になることもあります。
必ず違法と判断されるとお約束はできませんが、言われるままに従わなければならない立場ではありません。
やり取りの記録を残しておくことをおすすめします。
不倫相手への「求償権」

全額を先に支払った場合は、あなたから不倫相手に対して、責任割合に応じた分担(求償)を求めていくことができます。
不倫の慰謝料は、不倫をした二人が連帯して責任を負うものとされています。
相手の配偶者は、どちらか一方だけに全額を請求することも可能です。
「自分だけが請求されて、不倫相手は何も払っていない」という状況は珍しくありません。
自分だけ払った場合、相手にも負担してもらえるんですか?
はい。あなたが全額を支払ったなら、責任割合に応じた金額を不倫相手に請求できます。
割合は関係の経緯や主導性などの事情で変わりますが、たとえば半分ずつと評価されるケースであれば、支払額の半分を求めていくイメージです。

直接交渉すると職場での関係がさらにこじれるおそれがあるため、弁護士を間に入れて書面で進めるほうが現実的な場合が多いでしょう。
なお、示談の際に「求償権を放棄する」条項が入ることもあります。
その場合は放棄と引き換えに慰謝料額を下げる交渉材料にもなりますので、安易にサインせず内容を確認してください。
逆の立場、つまり不倫相手が先に全額を支払った場合には、あなたが相手から求償を求められる可能性もあります。
どちらの立場であっても、負担割合の話は感情的になりやすいため、金額の根拠を書面で整理しながら進めることが解決への近道になります。
社内不倫の慰謝料相場
相場は離婚に至ったかどうかで大きく変わり、おおむね数十万円から300万円程度の幅の中で判断されることが多いです。
離婚や別居に至った場合は数百万円と高額になりやすく、婚姻関係が続いている場合は、百万円ほどと比較的低い金額にとどまる傾向があります。
注意していただきたいのは、最初に提示される請求額は相場より高く設定されていることが珍しくない、という点です。
請求書に書かれた金額をそのまま受け入れる必要はなく、婚姻期間や不倫の期間・態様などの事情に応じた減額交渉の余地があります。
社内不倫の慰謝料についてよくある質問
ここからは、ご相談の中でよくいただく質問にお答えします。
1人で不安を抱えている方の疑問に近いものを選びました。
Q1. 社内不倫はどうやってバレることが多いですか?
社内のケースでは、周囲の噂や目撃、社内チャット・メールの誤送信、2人の距離感の変化から同僚が気づく、というパターンが目立ちます。
配偶者側には、帰宅時間の変化やスマートフォンの通知から発覚することが多いです。
すでに請求を受けている方は、相手がどんな証拠を持っているかの確認が対応の出発点になります。
Q2. 不倫相手と今後も同じ職場で働き続けられますか?
法的に同じ職場で働くこと自体が禁止されるわけではありません。
ただし、示談で接触禁止条項を結んだ場合の運用や、会社による配置転換の可能性は考慮しておく必要があります。
ご自身から異動を申し出て環境を変えることが、結果的に精神的な負担を減らすケースもあります。
Q3. 会社や同僚に自分から不倫のことを話す必要はありますか?
自分から報告する法的な義務はありません。
ただ、会社から事実確認(ヒアリング)を求められた場合に虚偽の説明をすると、その虚偽自体が問題視されるおそれがあります。
聞かれた場合の答え方は事前に弁護士と整理しておくと安心です。
身構えすぎず、聞かれたことに正直に答える準備をしておきましょう。
Q4. 相手の配偶者が会社に押しかけてきたらどうすればいいですか?
まず、その場で1人で対応しようとしないでください。
会社の総務や上司に対応を委ね、ご自身は直接の口論を避けることが大切です。
押しかけや電話が繰り返される場合は、弁護士を窓口にして「連絡は代理人へ」と一本化することで、職場への接触を止められる場合が多いです。
社内不倫の慰謝料と会社処分は別の問題
慰謝料(民事)と会社の処分(労務)は別の問題です。
混同したまま焦って動くと、払わなくてよい金額を払ったり、辞めなくてよい会社を辞めたりすることになりかねません。
弁護士にご依頼いただければ、慰謝料額の妥当性の確認や減額交渉はもちろん、示談条項のチェック、相手からの連絡の窓口対応まで一括して対応可能です。
また、会社に知られるリスクを最小限に抑えた進め方のご提案も可能です。
1人で抱え込まず、まずは大地総合法律事務所にご相談ください。
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