「詐欺被害を警察署に相談しに行ったのに、親身に聞いてくれない」
「被害届を提出したが、捜査が進んでいない!」
SNSやマッチングアプリ、メールなどを介した詐欺に遭ってしまったら「警察」へ被害届を提出します。
しかし、警察官から事件化は難しいと言われたり、証拠が少ないため捜査が進まないと言われるケースも少なくありません。
そこで、本記事では詐欺の相談を警察へ行っても動いてくれない理由を解説します。
告訴や捜査の仕組みも紹介するので、ぜひご一読ください。
詐欺被害の相談をしても警察は動かない?その理由とは

詐欺に遭ってしまい勇気を出して警察に相談したにもかかわらず、被害届が受理されなかったり、捜査が進展しないと感じたりするケースがあります。
なぜ警察はすべての詐欺被害に対応してくれないのでしょうか。
本記事では、詐欺被害の相談をしても警察がすぐに動かない、被害届が受理されない理由について詳しく解説します。
1.客観的な証拠がない・不足している
警察が捜査を開始するためには、詐欺の事実を裏付ける客観的な証拠が不可欠です。
相談者の話だけでは、事実関係の確認や犯人の特定が難しいため、被害届の受理や捜査に至らない場合があります。
証拠となりうるものの一例は以下です。
- 詐欺の手口がわかるメールやSNSのメッセージ
- 口座への振込明細書やクレジットカードの利用明細
- 犯人との通話記録(録音データなど)
- 売買を証明するための契約書や領収書
- 上記の内容がわかる画面のスクリーンショット
これらの証拠が不十分な場合、被害届が受理されない、あるいは受理後の捜査が十分に行われない可能性があります。

2.民事上のトラブルと判断されてしまう
警察は刑法に触れる犯罪行為を取り締まる機関です。
相談された内容が民事上のトラブル、個人間の権利や義務に関する紛争と判断された場合、警察の介入は難しくなります。
民事上のトラブルと判断されやすいケースの一例は以下です。
- 友人や知人間のお金の貸し借りによるトラブル
- 男女トラブルに見えるケース
- 契約不履行による損害賠償請求
これらのケースでは、当事者間の話し合いや民事訴訟によって解決すべき問題とされます。
ただし、明らかに相手を騙す意図があったり、組織的な詐欺行為が疑われる場合は、詐欺罪に該当するおそれがあるため刑事事件として扱われる可能性があります。

民事上のトラブルに見える場合は「民事不介入」として通常は刑事事件として取り扱ってもらえません。
3.被害金額が少額である
一般的に、詐欺事件の被害金額は捜査の優先度を判断する材料になります。
被害金額が明らかに少額である場合、他の重大な犯罪の捜査が優先され対応が後回しにされ、捜査が進展しにくいことがあります。
例として、チケット詐欺で3,000円をだまし取られたケースより、ロマンス詐欺で3,000万円振り込んでしまったケースが優先されやすいでしょう。
ただし「少額」の基準は明確に定められているわけではなく、被害状況や社会的な影響なども考慮されます。
また、少額でも同様の手口による被害が多数警察へ報告されている場合は、組織的な犯罪として捜査が進められることもあります。
警察へ相談すること自体は問題ありませんよ。
4.犯人の特定が困難
詐欺の手口は拠点が海外に置かれるケースも多く巧妙化しており、犯人の特定が難しいケースが増えています。
特に、インターネットを利用した詐欺では、以下のような理由で犯人の特定が困難になることがあります。
- 匿名性の高さ
インターネット上では、偽名や架空のIDを使用することが容易で、犯人の特定が困難なケースが多くなっています。
- 海外拠点の利用
犯人が海外に拠点を置いている場合、捜査を進めるためには国際的な協力体制を必要とし、困難なケースが多くなっています。
- 証拠が隠匿されやすい
インターネット上の詐欺行為は足跡を消すためにIPアドレスを偽装(なりすまし)したり、短期間でサイトを閉鎖したりするなど、証拠を隠滅しやすい傾向があります。
例として、フィッシング詐欺で偽のサイトに騙されてしまっても、警察に届ける前にすぐに閉鎖されてしまった、海外のサーバーを経由して犯行が行われた場合などは、犯人の特定に多大な時間と労力を要するため捜査が進展しにくいことがあります。
詐欺被害で警察に動いてもらうためにできることとは?
しかし、警察に動いてもらうためにできることもありますよ。
被害届を出そうとしてもうまく警察で話せず、捜査は難しいと言われてしまっても、諦めずに以下の行動を取りましょう。
できる限り証拠を提出する
警察は証拠の有無も被害届の受理や捜査を進める際の判断材料としています。警察へ相談する際には、できる限り証拠を提出することが大切です。
もしも証拠の作成や収集方法がわからない場合は、弁護士へ相談することもおすすめです。
弁護士はどのようなものが詐欺被害の証拠に生かせるか熟知しており、警察への被害届の提出もサポートできます。
警察署や担当者によって、受理に対する姿勢に差が見られることがあります。
もし、一度受理を断られても、弁護士に相談してサポートを受けることも検討しましょう。
詐欺直後はショックも大きく、証拠の作成や収集が難しいものです。
お気軽に詐欺被害に強い弁護士へお尋ねくださいね。
被害届ではなく告訴を行う
詐欺被害に遭った際は警察への被害届ではなく「刑事告訴(けいじこくそ)」という方法も選択肢の1つになります。
告訴とは、犯罪の被害者やその親族、代理人が捜査機関(警察や検察など)に対して犯罪事実を申告し、捜査と犯人へ処罰を求める意思表示のことです。
警察や検察は告訴を受理したら捜査を開始しなければなりません。
詐欺被害は刑事告訴できる?被害届との違いや捜査の流れ

ただし、告訴を受理する以上は捜査をする必要があるため、受理に難色を示すケースもあります。
告訴状を提出する際には、刑事事件に詳しい弁護士に相談しておくことが望ましいでしょう。
この章では告訴について、被害届との違いや告訴の受理のポイント、捜査の流れを紹介します。
告訴と被害届の違い
告訴と被害届には、以下図で示すように違いがあります。
告訴 | 被害届 | |
提出の目的 | 犯人の処罰を求める | 被害の事実を申告する |
処罰を求めるかどうか | 処罰を求める明確な意思表示ができる | 処罰を求める意思表示とは言いきれない |
提出者 | 告訴権者(被害者、その法定代理人など)に限定 | 被害者など |
法的効果 | 捜査機関は原則として捜査を開始する義務が生じる(不起訴の場合、理由の説明を告訴人に通知する必要がある) | 捜査機関は被害の事実を認識し、捜査を検討する |
受理の判断 | 慎重な判断がなされる | 告訴と比較すると受理されやすい |

そのため、受理の判断は被害届より厳しい傾向があります。
告訴は受理されないこともある
上記のとおり告訴は、被害届と比べて告訴を行う被害者側の明確な処罰意思が示されているため、捜査機関は原則として捜査を開始する義務を負っています。
しかし、以下のような場合には、告訴が受理されないこともあります。
- 告訴の内容が具体性に欠けている
- 証拠がなく、犯罪の事実が確認できない
- 公訴時効が成立している(※)
- 被害がすでに弁済されている
- 海外で発生している事件である
- 発生場所や非告訴人・告訴人の居住地を管轄する地域以外の警察署へ提出している
告訴が受理されないと捜査をしてもらえない、という点では告訴人側(被害者側)には大きなデメリットです。
しかし、被害金の弁済が行われると捜査が行われにくい点は、メリットもあります。
捜査を避けたい詐欺の加害者側は、告訴を行う前に被害金の弁済を行って来る可能性があります。
(※)公訴時効とは犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると時効となり、告訴ができなくなる制度です。犯罪の種類によって時効は異なっており、詐欺罪の公訴時効は7年です。
時効の詳しい説明はこちらから▼
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警察署によって対応が異なる
警察署や担当者によって、告訴状の書き方や受理に対する姿勢に差が見られることがあります。告訴は口頭または書面で行いますが、一般的に告訴状(書面)で行います。
なお、告訴状には法律で定められた書面はありません。受理を促すためにも、書き方に困ったら弁護士に尋ねてみることがおすすめです。
告訴受理後の捜査の流れ
告訴が無事に受理された場合、捜査は以下の流れで進んでいきます。
- 告訴の受理
提出された告訴状に基づいて、警察または検察が事件を受理します。 - 捜査開始
告訴状の内容に基づき、捜査機関が捜査を開始します。被害者や関係者への事情聴取、証拠収集などが行われます。必要に応じて加害者が逮捕されるケースもあります。 - 書類送検
警察が捜査を終えた後、速やかに事件の書類と証拠を検察へ送ります。 - 検察による起訴・不起訴の判断
検察は警察から送られてきた書類や証拠に基づいてさらに捜査を行い、被疑者を起訴・不起訴とするかを判断します。 - 刑事裁判(起訴された場合)
被疑者が起訴された場合、刑事裁判が開かれ裁判官から判決が言い渡されます。
詐欺の被害に悩んだら弁護士に相談すべき3つの理由
「詐欺で多額の財産を失ってしまった、今後どうしたらいいだろう」
「警察に相談したけど、仕方ないとしか言ってもらえず落ち込んでいる」
詐欺被害は数千万にも上る財産を失ってしまうケースもあり、被害者は精神的なショックや今後の不安から、どのように対応すべきかわからなくなることがあります。
そんな時こそ、弁護士への法律相談が解決への近道となる可能性があります。この章では詐欺の被害に悩んだら弁護士へ相談すべき3つの理由を紹介します。

警察へ相談してもうまく捜査が進まない、そんなケースでもまずは弁護士へご相談ください。
1.弁護士なら警察署への同行も可能
警察に相談に行く際、一人では不安を感じる人もいるでしょう。被害者側にも関らず、詐欺相談の際には警察官から威圧的な態度を受けたように感じる人もいます。
そんなとき、弁護士に依頼すれば警察署への同行や、被害状況を的確に伝えるためのアドバイスを受けることができます。
また、被害届や告訴状の作成を法的な観点からサポートしてもらうことで、受理される可能性を高めることができます。
弁護士なら、被害届も告訴状の提出も、被害者側に寄り添ったサポートができます。
どこまで対応してもらえるかは弁護士や事務所によって異なるため、相談時に確認することがおすすめです。
2.民事事件として被害回復もサポートできる
警察は刑事事件として捜査を行うため、直接的に被害金額の回復をサポートしてくれるわけではありません。
しかし、弁護士は、加害者に対して民事上で損害賠償請求を行うなど被害回復をサポートできます。
二次被害の防止策のアドバイスも実施しており、さらなる被害の拡大を止めることも可能です。

3.示談交渉や訴訟も可能
弁護士は、加害者との示談交渉を代理人として行えます。加害者側との示談が成立すれば、裁判を経ることなく被害回復が期待できます。
また、示談交渉が不調でも、弁護士は民事訴訟を提起し訴訟のなかで被害回復を目指すことができます。
まとめ|詐欺相談で警察が動かない場合は、早急に弁護士へご相談ください
詐欺被害に遭い、警察に相談しても十分な対応が得られないと感じた場合は、早急に詐欺被害に強い弁護士へご相談ください。早期のご相談で、被害金の回収が実現できる可能性は高くなります。
弁護士は法的知識と経験に基づき被害回復に向けてサポートをしています。
警察が被害届を受理してくれない、親身になってくれないと感じても、一人で悩まず法律相談を受けてみましょう。