結婚を意識して真剣な出会いを求めていたはずが、「これって本当に愛なのかな?」と不安を感じたことはありませんか。
近年、マッチングアプリやSNSでの出会いをきっかけとした結婚詐欺が増加しています。
「この人との将来に不安がある」
「もしかして騙されているのでは?」
このように感じている人はもちろん、これから真剣な出会いを求める人も、大切なあなた自身と資産を守るために、結婚詐欺の特徴を頭に入れておきましょう。
本記事では、結婚詐欺の定義から詐欺師の見分け方、被害に遭いやすい人の特徴、そして具体的な対策と被害時の対処法まで弁護士が詳しく解説します。
結婚詐欺とは?定義を弁護士が解説

まずは、結婚詐欺がどのような行為を指すのか、基本的なところからみていきましょう。
結婚詐欺とは、結婚する意思がないにもかかわらず、相手に結婚する意思があると信じ込ませて、金銭や財産を騙し取る行為を指します。
単なる恋愛関係のもつれや別れとは異なり、最初から「騙して財産を奪う」という目的を持って近づいてくることが特徴です。
法的には「詐欺罪」に該当する可能性があり、刑事事件として立件されているケースもあります。
では、法的な結婚詐欺にあたる行為・あたらない行為、そして実際にあった手口や事例について詳しく解説していきます。
結婚詐欺にあたる行為
結婚詐欺にあたる行為には、以下のような特徴があります。
- 「結婚前提」と明言して交際
「将来は必ず結婚しよう」「婚約しよう」など、明確に結婚を約束することで相手の信頼を得る
- 結婚を理由とした金銭の要求
「結婚後の新居の敷金」「結婚式の準備金」など、結婚に関連した名目でお金を要求する
- 虚偽の身分や経歴の申告
実際は既婚者であったり、職業や収入、学歴など嘘をついたりしている
- 複数の相手と同時進行
同時期に複数の人に同じような手口で接近し、金銭を騙し取っている
結婚詐欺が成立するためには、「結婚する意思がないこと」と「財産上の利益を得る目的があること」の両方が必要です。
単に交際中に金銭の貸し借りがあっただけでは、結婚詐欺とは認められない可能性が高くなります。

結婚詐欺にあたらない行為
一方で、以下のような行為は一般的に結婚詐欺にはあたりません。
- 交際中の心変わり
交際開始時には本気で結婚を考えていたが、途中で気持ちが変わった場合
- 金銭の貸し借りが恋愛感情に基づく場合
相手を助けたい、支えたいという感情から相手から請求をされておらずお金を貸した場合
- 結婚の約束がなかった場合
明確な結婚の約束や婚約がなく、単なる交際関係だった場合
- 経済的利益を得ていない場合
交際はしたが、金銭や財産を渡していない場合
多くの恋愛トラブルは、結婚詐欺ではなく民事上の問題として扱われます。
感情的には「騙された」と感じても、法的に「詐欺」と認められるためには、明確な証拠が必要です。

「裏切られた」「騙された」という感情は理解できますが、法的に詐欺と認められるかは別問題です。
結婚詐欺の手口・事例
結婚詐欺の典型的な手口には、いくつかのパターンがあります。
ここでは実際の事例を紹介します。
<被害者と被害額>
・被害者:40代女性 ・被害額:合計約500万円 <実例> イギリス在住の韓国人と称する男とSNSで知り合い、一度も実際に会っていないにもかかわらず結婚を約束。 「仕事で必要な金を立て替えてほしい。立て替えてくれないと契約違反で警察に捕まって刑務所に入ることになってしまう」などとSNSを通して連絡があった。 男を信じていた女性は、指定された口座に複数回振込入金してお金をだまし取られた。 参考:警察庁「SNS型ロマンス詐欺」 |
最近では「国際ロマンス詐欺」といって、外国人になりすまして信頼を得たうえで金銭をだまし取るケースも増えています。
違和感や不自然さを感じたら、早めに周囲に相談することが大切ですよ。
結婚詐欺によって成立する犯罪
結婚詐欺は、刑法に定められた「詐欺罪」が適用される可能性があります。
状況によっては、まだお金を取られていなくても「詐欺未遂罪」に問われることもあります。
以下では、それぞれの罪についてみていきましょう。
結婚詐欺の場合には詐欺罪
結婚詐欺が成立すると、「詐欺罪(刑法246条)」が適用されるのが一般的です。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 引用:e-Gov 法令検索「刑法」 |
- 結婚の意思がないのに、あるように見せかけて相手を騙す(欺罔行為)
- 結果、相手が信じてお金や財産を渡す(錯誤と財産移転)
- 最初からお金を取る目的だった(詐欺の故意)
以上の要件がすべて揃っていると、詐欺罪として立件される可能性が高くなります。
ただ、騙す意図があったことの証明は簡単ではありません。
ただし、証拠や状況によって判断が分かれることもありますので、早めに弁護士へ相談することが大切です。
結婚詐欺未遂の場合には詐欺未遂罪
一方で、相手に騙されそうになったものの、お金を渡す前に詐欺に気付いて被害を防いだ場合でも、状況によっては「詐欺未遂罪(刑法250条)」が適用されることがあります。
(未遂)
第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。 引用:e-Gov 法令検索「刑法」 |
詐欺未遂罪が成立するポイントは、「実際に財産の移転はなかったものの、詐欺を働こうとする行為があったこと」です。
例えば、以下のようなケースです。
- 結婚をちらつかせてお金を要求する、LINEやメールがある
- 結婚資金名目での振込先を伝えられている
- 借用書の作成や振込直前まで話が進んでいた
詐欺未遂であっても刑事罰の対象となることは覚えておきましょう。

結婚詐欺師の特徴5選
結婚詐欺って、手口が巧妙だって聞きます。実際の詐欺師って、どんな特徴があるんでしょうか?普通の恋人との違いがわからなくて…。
結婚詐欺師は最初から人を騙すつもりで近づいてくるので、言動に一定の傾向があります。今回は、特に注意すべき5つの特徴を紹介します。
見た目や第一印象だけでは見抜けないのが結婚詐欺の怖いところです。
しかし、相手の言動や行動パターンを注意深く観察することで、リスクを早めに察知できる可能性もあります。
理想のパートナー像を演じてくる
結婚詐欺師は、理想のパートナー像を完璧に演じてくる傾向があります。
例えば「優しくて家族思い」「仕事ができて経済的にも安定している」など、絵に描いたような完璧なパートナーを演じます。
特に、出会って間もないうちから「あなたみたいな人に初めて出会った」と強調してくる場合は、注意が必要です。
<注意すべきポイント>
- 会話のなかで、あなたの趣味や価値観を頻繁に質問してくる
- あなたが話した内容と似たような経験や趣味を「実は自分も」と主張する(ミラーリング)
- あなたの理想とする関係性や将来像に、不自然なほど同意する
- 短期間で「運命の人に出会えた」「これほど合う人はいない」などと主張する
出会ってすぐに交際を申しこまれた
結婚詐欺師は、出会ってすぐに「交際しましょう」「結婚を前提に付き合いたい」などといった言葉を使い、急速に距離を詰めてきます。
「ラブボンビング(愛の爆撃)」と呼ばれる手法で、冷静に考える時間を与えず、相手の感情に訴えかけて判断力を鈍らせるための戦略です。
<注意すべきポイント>
- 最初の数回のデートで交際を強く迫る
- 頻繁なメッセージや電話で常に連絡を取ろうとする
- 過剰な愛情表現が多い(大量の花や高価なプレゼントなど)
- 数ヶ月以内に結婚や婚約の話を持ち出す
- 「こんなに合う人はいない」「運命的な出会い」などという言葉を多用する
スピード感のある関係には違和感をもち、冷静さを保ちつつ「急ぎすぎていないか?」と自分に問いかけてみることが大切です。
仕事や身元をはぐらかす発言が多い
結婚詐欺師は、自分の素性や背景について具体的な情報を明かしたがらない傾向があります。
職業や収入、出身地などについて聞いたとき、曖昧な返答や話題をすり替えるような様子があれば注意が必要です。
<注意すべきポイント>
- 仕事の内容や会社名を具体的に説明しない
- 「今は言えないけど、すごい仕事」「特別なプロジェクト」などと曖昧な表現を使う
- 勤務先に電話をかけることや、職場を訪問することを避ける
- 住所や実家の場所について明確な情報を教えてくれない
- 質問すると話題をそらしたり、怒ったりする
交際が進むにつれて相手の情報がむしろ曖昧になっていくようであれば、怪しいと疑うべきでしょう。
金銭を要求し、借用書の作成を嫌がる
結婚詐欺師の最終目的は金銭の詐取であるため、交際が進むと金銭の要求が始まります。
「実家の親が倒れた」「事業が一時的に苦しい」など、同情を誘うような理由でお金を要求するのも、結婚詐欺によくある手口です。
また、一度お金を渡してしまうと、さらに要求がエスカレートする傾向があります。
<注意すべきポイント>
- 借用書の作成や振込記録の残る形を嫌がる
- 「一時的に」「すぐに返す」と言いながら、返済がない
- 借用書の作成を提案すると「信じてくれないのか」と感情的になる
- 「二人の将来」「結婚後の生活」を理由にした高額な金銭要求がある
- あなたの収入や資産、貯金額について過度に興味を示す
「愛しているなら信じて」という言葉で借用書を拒否する相手は、返済する意思がない可能性が高いといえます。
家族や友人を紹介してくれない
結婚を前提に付き合っているのに、家族や友人など、相手の周囲の人間関係を一切紹介してくれない場合は要注意です。
本当に結婚を考えているなら、自然と周囲との関係も共有していこうとするのが自然です。
しかし、詐欺師は「プライバシー」「仕事が忙しい」「家族が遠方」などと理由をつけて紹介を避ける傾向があります。
結婚詐欺に遭いやすい人の傾向
結婚詐欺師は標的の弱点を見抜くのがうまく、特定の心理的特徴を持つ方を狙う傾向があります。
「◯◯な人が必ず被害に遭う」というわけではありません。
ただ、詐欺師が狙いやすいタイプや、詐欺に巻き込まれやすい心理状態というのは存在するといわれています。
以下では男女別に、結婚詐欺に遭いやすい人の特徴を紹介します。
結婚詐欺に遭いやすい男性の特徴
結婚詐欺に遭いやすい男性の主な特徴は、以下のとおりです。
- 真面目で優しく、人を疑うことに慣れていない
- 恋愛経験が少ない、女性との交際に不慣れ
- 年収や資産が平均より高い(経済的に余裕がある)
- 家族間での会話が少ない
- 相談相手が少ない
- 年齢が高め(いわゆる中年男性)
- 過去に失恋や離婚のトラウマがある
このような男性は、理想的な女性から好意を寄せられると、つい自分に自信を持つようになる傾向があります。
疑いの心よりも恋愛感情が優先されやすく、詐欺師はこのような感情にうまく入り込んできます。
早めに第三者に相談することが重要ですね。
結婚詐欺に遭いやすい女性の特徴
結婚詐欺に遭いやすい女性の主な特徴は、以下のとおりです。
- 経済的に自立していて年収が高い
- 忙しくて出会いが少ない(キャリア女性・経営者など)
- 結婚願望が強い
- 年齢的に焦りがある
- 恋愛に対して純粋で素直
- 家族や友人にプライベートの悩みを話さない
- ロマンティックな恋愛観を持っている
詐欺師は、女性が「理想の結婚相手と出会いたい」という気持ちを巧みに利用します。
特にマッチングアプリや婚活サービスを利用する女性は、真剣に結婚を考えている分、相手を信じやすくなってしまうケースが目立ちます。
自立しているからこそ1人で問題を抱え込んでしまい、詐欺師の思うツボになってしまうことが多々あります。違和感を覚えたら、遠慮せず周囲に相談するようにしましょう。
結婚詐欺に遭わないようにするための工夫・心構え
具体的にどのような対策や心構えを持っていれば、被害を防げるのでしょうか?
結婚詐欺から身を守るためには、以下3つの心構えが特に重要です。
それぞれの対策について、具体的な実践方法と併せて解説します。
恋愛中こそ「冷静な目線」を持ち続ける
「この人こそ運命の相手かも」と恋愛中に感じたときこそ、少し立ち止まって冷静になることが大切です。
詐欺師は、あえて「理想の相手像」を完璧に演じてきます。
すべてがスムーズすぎて話が合いすぎるといった違和感に、早めに気付けるかどうかがポイントです。
関係が深まるにつれて気持ちが盛り上がっても、相手の言動を第三者の目線で振り返る習慣を持っておくと、冷静な判断がしやすくなります。
不安や違和感は我慢せずにメモ・相談する
「なんとなく引っかかる」「ちょっと変だな」といった違和感を、そのままにしてはいけません。
恋人との関係では、自分の直感や不安を軽く扱ってしまいがちですが、このような不安や違和感は自分からの重要なサインである可能性が高いです。
内容を記録に残すことで、冷静に振り返ったり、後から第三者に相談しやすくなったりします。
できれば信頼できる友人、または専門家に早めに相談しましょう。
「お金の話」が出たら第三者を挟むようにする
恋愛関係でお金の話が出たときは、いかに信頼関係があっても誰かに相談するようにしましょう。
特に、緊急性が高い話や結婚を前提とした出費などを理由に、お金の援助を求められる場合は要注意です。
「家族にも相談する」「弁護士に確認してみる」などと一言伝えるだけで、誠実な相手なら理解を示すでしょう。
逆に、嫌がる場合は警戒が必要です。
結婚詐欺に遭った場合の対処法

警察に行くにも勇気がいるし、誰に相談すればいいのかもわからなくて…。

「泣き寝入り」や「恥ずかしいから誰にも言えない」といった気持ちは自然な反応ですが、結婚詐欺はれっきとした犯罪です。
以下では、結婚詐欺に遭った場合に取るべき具体的な対処法を解説します。
警察に届け出る
まず検討すべきは、警察への被害届の提出です。
刑法における詐欺罪(刑法246条)が成立すれば、刑事事件として捜査が開始され、加害者が逮捕・起訴される可能性があります。
<警察に届け出る際に必要なポイント>
- 相手とのやり取りを記録したLINEやメール、通話履歴
- 金銭のやり取りがあった場合は通帳記録や振込明細
- 「結婚を匂わせていた」ことがわかるメッセージ内容や写真、証言
警察は証拠が不十分な場合、動きが鈍くなる傾向があります。
できるだけ多く、客観的な証拠を集めたうえで相談しましょう。
弁護士に相談する
結婚詐欺の場合、警察が動いても「損害賠償」や「金銭の返還」を求めるには、民事の手続きが必要です。
民事の手続きの際には、弁護士へ相談することをおすすめします。
<弁護士に相談するメリット>
- 相手に内容証明郵便や返金の通知書を送ることでプレッシャーをかけられる
- 金銭返還や慰謝料請求など、民事訴訟の選択肢を正確に判断してもらえる
- 「詐欺だったかどうか」「返金請求が可能か」などの法的見通しが明確になる
被害額が大きい場合や、証拠がある程度揃っている場合には、早期に弁護士へ相談しましょう。
証拠が揃っていれば、返還請求や損害賠償の可能性も十分にあるため、早めに専門家に相談してください。
まとめ|結婚詐欺にあったら弁護士にご相談ください
結婚詐欺は、決して珍しい事件ではありません。
マッチングアプリやSNSを通じた出会いが当たり前になった今、誰もが巻き込まれる可能性がある時代です。
- 少しでも違和感を覚えた
- 金銭の話が出た
- 相手の話がどうも腑に落ちない
このような小さなサインを見落とさないようにしましょう。
大地総合法律事務所は、詐欺被害に特化した事務所です。
契約前に弁護士と直接話せるので、ご安心頂けます。
相談は無料ですので、詐欺被害に遭ってしまってご不安な方は、弊所までご相談ください。