事件から学ぶ!詐欺被害の実態と返金事例~悪質出会い系サイト詐欺被害編~
2021.12.17 | 大地総合法律事務所
弊所ではさまざまな消費者被害のご相談・ご依頼をいただいております。
その中でも2018年頃より急増している悪質出会い系サイトを媒介とした詐欺被害について、事例を紹介いたします。
ひとくちに「悪質出会い系サイト詐欺被害」といっても様々な手口があります。
例えば、本来の出会い系サイトの目的である異性との出会いの機会をサクラによって演出して、サイトでの無意味なやり取りを継続させ利用料の課金をあおる手口や、「サイト上でメッセージをやり取りし相談に乗ることで報酬金がもらえる」などと高額な副業収入が得られると謳うサクラを使って課金を誘う手口もあります。
特に「報酬金」「支援金」「当選金」を渡すなどと謳う手口については、「連絡先交換」「文字化け解除」「セキュリティーコード」などのキーワードで高額な課金を迫るという共通点があります。つまり、報酬金などを渡すためにサクラとの連絡先交換が必要で、その連絡先交換に先立つ手続き費用などと称して高額なポイント課金を強いてくるのです。
今回は、「悪質出会い系サイト被害」の中でも被害額が大きくなってしまいがちな事例の1つとしてサクラが「芸能人」を騙っている被害事例です。
~Oさんのケース~
- 性別 女性
- 年代 50代
- 被害発生時期 2021年7月頃
- 被害内容 悪質出会い系サイト詐欺被害
- 被害額 9,000,000円
- 返金額 8,000,000円
1.被害概要
※本文内に出てくるジャニーズ事務所の関係者や所属タレントを名乗る人物は、その全員がサクラであり、実在の人物とは一切の関係がないことを確認しております。
Oさんは、ある日1通の間違いメールを受信しました。それは「アドレス、Aさんに教えてもらいました!!!今、大丈夫ですかー?」というメッセージで、送信元がドコモのキャリアメールのアドレスだったことと、偶然Oさんには、テレビ局に勤務しているAさんという同名の友人がいたため、Oさんは親切心から返信をしました。
しばらくやり取りを続けるうちに、メールの送信者は、ジャニーズ事務所所属のKing & Princeのメンバーである「平野紫耀」さんを名乗りました。
Oさんは、以前からジャニーズのファンでした。また、紹介者とされたAさんが、テレビ局勤務の友人と同名だったため「自分がジャニーズのファンだと知っていて平野さんに紹介してくれた」と勘違いしてしまいました。これらの不運な偶然が重なったことが課金地獄への入口となってしまいました。
もし、この時点で友人のAさんに事実関係を確認することができていれば、多額な被害を被ることはなかったかもしれません。
Oさんは、平野さんを名乗るサクラとのメールのやり取りを3日程継続したのち、平野さんを名乗るサクラから「このやり取りが世間に知られてしまうと非常にまずい。実は会員制のサイトがあって、そちらの方がセキュリティーの強化もされているから、以降のやり取りはそのサイト上で行いたい」などと要求されたため、Oさんは指示どおりに誘導されたサイトへの会員登録を行いました。
会員登録後、次は、平野さんの「マネージャー」を名乗るサクラからサイト上でメッセージが届きました。そこには、「平野と連絡を取るとはどういうつもりか」「平野と2人で会ったり、平野の仕事現場に来たりするのは構わないが、平野をこのサイトから退会させてほしい」などとありました。
また、ジャニーズ事務所の副社長である「滝沢秀明」さんを名乗るサクラからも「平野をよろしく」「平野をサイトから退会させるまでの手続きにかかった費用はこちらが負担する」「平野をサイトから退会させてくれた暁には謝礼として2000万円を用意している」などのメッセージが届きました。使命感にかられたOさんは、平野さんを名乗るサクラに、サイトから退会するよう説得をするため、メッセージのやり取りを繰り返しました。
Oさんはこの時点ですでにサイト内でのメッセージ送受信の費用として400万円近くの課金を行ってしまっていました。
その後、追い打ちをかけるように、次はサイトの運営管理を名乗るサクラから「連絡先交換イベント」として、「今から10日間で一番課金できた方はペアの相手と無料で連絡先交換ができる」などとメッセージが届きました。平野さんのマネジャーを名乗るサクラ、滝沢さんを名乗るサクラからも、イベントでの課金を煽るようなメッセージが次々と届き、結果的にOさんはわずか10日間でさらに500万円を課金することとなりました。
イベントの終了後、すぐに平野さんとの連絡先交換ができると思っていたOさんは、その後の手続きが進行しないことに不安を覚えたため、ここで初めてテレビ局勤務の友人Aさんに確認をしたところ、Aさんから「そんな話は知らない、それは詐欺なのではないか?」と指摘されたため、被害の事実に気が付き、弊所への相談を行いました。
2.交渉結果
返金請求額の8.8割強の返金
3.コメント
Oさんの事例については、迷惑メールにあった紹介者の名前とテレビ局勤務の友人の名前が偶然合致してしまったこと、また、Oさんがもともとジャニーズファンであったことが重なり、サイトの利用開始から被害の発覚までに約1年程の期間が過ぎてしまいました。
サクラが送ってくるメッセージも、ジャニーズに関する実際のニュースやイベントなどを盛り込みながらかなり巧妙に作られていたために、Oさんは完全に本人と信じてしまったのです。
弊所がOさんの案件に介入してからも、Oさんに依頼を取り下げさせようとサクラからのメッセージは継続して送られてきていて、そのため、Oさんもサクラを信じてしまう気持ちと、被害回復をしたい気持ちとのはざまで揺れていました。
弊所も、介入と並行して、長期にわたってOさんとの対話や説得を継続したところ、最終的には、今回の件が、詐欺被害であったことを再度認識していただき、返金請求に成功しました。
本件の事例のように、サクラが芸能人を騙る悪質出会い系サイト詐欺被害については、「やり取りが世間に知られてしまうと非常にまずい」などと、有名人であることを利用して自然なかたちで、やり取りを行っていることを口外しないように要求されます。そのため、周囲の人に相談したりできずに、被害の発覚が遅れてしまいがちです。
また、一般に芸能界・芸能人と聞くと、華やかで裕福なイメージが強いため、芸能人を名乗るサクラから「高額な謝礼を支払う」「かかった費用はあとで清算する」などと言われると、一旦サクラが芸能人本人であると信じてしまった後は、高額な課金であっても、「後で戻ってくるから…」とさほど気にせずにどんどん支払いをしてしまう方が多いのも特徴です。その結果、高額被害に陥りやすい傾向があります。
最後に、「このようなやり取りを行い課金してしてしまった」「このサイトは大丈夫?」など、利用しているサイトなどが少しでも「怪しい」と感じた方は、勇気をもって相談してみましょう。
弊所へご相談いただく詐欺被害の事例の多くのケースで、被害者の方が「誰にも相談ができなかった」ことで、被害が大きくなるまで発覚が遅れてしまうということがあります。
これ以上の詐欺被害の防止と被害回復のためにも、以下のリンクからお気軽に無料相談ください。
悪質出会い系サイト詐欺に関する典型的な被害事例などについては、こちらのページもご参照ください。