事件から学ぶ!詐欺被害の実態と返金事例~悪質副業詐欺被害編~【FX】
2022.06.10 | 大地総合法律事務所
弊所ではさまざまな消費者被害のご相談・ご依頼をいただいております。
その中でも2021年頃より相談件数が増加している副業詐欺被害について、事例を紹介いたします。
ひとくちに「副業詐欺」といっても様々な手口があります。
例えば「写真を投稿するだけ」「動画を投稿するだけで簡単に稼げる」などと今話題のインフルエンサーとして莫大な収益を得るノウハウを教えるといったものや、「ブログ記事で簡単集客」などとアフィリエイト広告での収益獲得手法を指南するというような手口もあります。
いずれもすべての共通点は「誰でも」「簡単」「隙間時間で」「スマホ一台で稼げる」などのキーワードです。
今回は、「絶対に稼げる」と謳うFX取引の自動運用ツールを使った投資関連の副業詐欺被害事例です。
~Sさんのケース~
- 性別 男性
- 年代 30代
- 被害発生時期 2021年7月頃
- 被害内容 悪質副業被害
- 被害額 840,000円
- 返金額 760,000円
1.被害概要
個人事業主であるSさんは、コロナ禍の影響もあり、所得が下がっていることに日々悩んでいました。
ある日、インターネットを閲覧していたSさんは「ワンプッシュするだけで即日収入!」「1日3分の操作すらいらない、1か月後に200万円が手に入る」などと記載がある、副業情報を販売するウェブページを見つけました。
興味をひかれたSさんは「無料登録するだけ」で情報が手に入るとあったため、「まだ内容は良く分からないが、とりあえず無料登録だけでもしてみよう」と、早速そのウェブページから、販売業者の公式LINEアカウントを友だち追加しました。
Sさんは、販売業者とのLINEのやり取りや、販売業者より配信されたYouTube動画を閲覧し、その副業がFX取引に関する内容であることを理解しました。
そのYouTube動画内では、モニターが実際にデモアカウントでFX取引を行った結果、販売業者が述べるような利益が出ている場面や、更には証券会社からの入金記録が記帳された通帳が映されていたため、Sさんは販売業者のことを完全に信用してしまいました。
Sさんは、その後、営業担当者から「具体的な申し込みの方法を教える」との連絡を受け、早速、アポイントの予約を行い、後日、電話で詳細の説明を受けました。
営業担当者は、Sさんに対し「我々が開発してきたFX取引用の自動売買ツールを使うことで高収益を得られることは確定している。契約代金は50万円だが、すぐに元を取ることができる。」などと強引な勧誘を行いました。
販売業者を完全に信用していたSさんは、営業担当者から指示されるままに、電話口で担当者に自身のクレジットカード番号を伝え、購入・決済処理を行いました。
購入後、販売業者から、事前準備としてFX取引用の証券口座開設を行うように指示を受けました。
Sさんは、これも担当者からの指定どおり、バヌアツ共和国に所在する【TITAN FX:タイタンFX】と称する証券会社にて口座開設を行い、証拠金の預け入れを行いました。
Sさんが運用を開始したところ、自動売買ツールを使ったトレード自体は順調でした。
しかし、契約時に使用したクレジットカードの明細を後日確認してみると、営業担当者から「契約代金は50万円」と聞いていたにもかかわらず、実際には「84万円」のクレジット決済がされていました。Sさんはこれを不信に思い、販売業者へ問い合わせしたところ「担当者から連絡する」などと告げられたまま、一向に回答はありませんでした。
その後、SさんがFX取引を行っていたトレード画面を確認したところ、突然、証拠金が0になっており、ここでSさんは騙されたことに気が付き、弊所への相談を行いました。
2.交渉結果
返金請求額の8.8割強の返金
3.コメント
Sさんの事例については、当初、販売業者は、こちらからの書面や電話による連絡に一切応じなかったため、返金交渉が難航する可能性がありました。
そこで、Sさんの被害はそもそもが、本人以外によるクレジットカードの不正利用に近い形であったので、この事実をクレジットカード会社と更には販売業者が利用していた決済代行業者へも通告し、返金交渉への協力を仰いだところ、ようやく販売業者との直接交渉にこぎつけることができました。
交渉中に明らかになったことですが、販売業者は当初、「1日5分で毎日5万円」というキャッチコピーで本件商材を販売していましたが、購入者に、より高単価のプランでの契約を行わせるため、「1日3分の操作すらいらない、1か月後に200万円が手に入る」などとキャッチコピーで謳う内容が次第にエスカレートしていったそうです。
そもそも投資取引などは、当然損失リスクも生じるものですから、「確実に稼げる」「契約代金の元は取れる」などの勧誘を受けた時点で「嘘」であると思った方が良いでしょう。
また、本件のように、販売業者側が、決済時にクレジットカード番号を聞き出し、それを利用して不正に決済を行うという事例を見かけることがあります。
電話口などで、自身のクレジットカード番号などを他人に教えてしまうことは絶対にやめてください。また、身に覚えがないクレジットカードの明細が届いたりした場合はすぐにカード会社に確認するようにしてください。
コロナ禍における先行きの不安や経済的不安につけ込む手口が相当数増えており、弊所への相談数もそれに伴って非常に増えております。
そのような被害に遭わないよう、このコラムを見ていただいた読者の皆様には充分にご注意いただきたいと思います。
最後に、少しでも「怪しい」と感じるような副業に手を出してしまった方、「多額の契約代金を支払いしている」、「誰にも相談ができない」という方も、これ以上の詐欺被害の防止と被害回復のためにも、以下のリンクからお気軽にご相談ください。
悪質副業詐欺に関する典型的な被害事例などについては、こちらのページもご参照ください。